●そのよんじゅう(最終話)

「ちよ、誕生日おめでとう。」
「おめでとう。」

今日はちよちゃんの5歳の誕生日です。
おっきなケーキとごちそうを前に、みんなにこにこ嬉しそうです。

「ほら、ちよ、プレゼントだぞ。」
「お父さんありがとう!」

お父さんがちよちゃんにプレゼントの包みを渡しました。
ちよちゃんはお父さんとプレゼントとを見比べながら、夢中で包装をときました。

「わぁ!」
ちよちゃんがプレゼントの包みを開けると、中にはちよちゃんが前から欲しがっていた、表紙の素敵な絵本が入っていました。
「ちよ、これ字がいっぱいだけど、ちゃんと読める?」
「うん!ありがとう!」
ちよちゃんはもう待ちきれないといったように、本の表紙をめくりました。

そこには、とてもとても仲良しな、幸せな家族の絵がありました。
その絵をのぞき込む三人も、とてもとても仲良しそうに、幸せな笑顔をしています。

その時、ふいに誰かが歌をうたっているような気がして、ちよちゃんはお部屋の中を見渡しました。
けれどお部屋の中には、お父さんとお母さん以外、誰もいません。
もちろん、他のどの部屋にだって、誰かいるはずありません。

(きのせいかな…?)

ちよちゃんはまた絵本に目を落としました。
「ほら、ちよ。喜んでくれるのは嬉しいけど、ご本読むのは後にしなさい。」
「そうだぞ、ちよ、食事の時に本を読むのはお行儀悪いぞ。」
「はーい」
ちよちゃんは、絵本をぱたんと閉じました。

それからふと、思い出したのです。

(さっきのうた…しってる)

ちよちゃんは耳を澄ましてみましたが、もう何も聞こえてきません。
ただ、部屋の中には、幸せな笑い声が、いつまでもいつまでも、響いていました。

その笑い声は、ふわりと空気に乗って、遠い誰かまで届きそうな、そんな声でした。




ちよちゃんとかみさま おしまい

sage