Neetel Inside 文芸新都
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日本おかしばなし
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時はお菓子大競争時代、異なるお菓子同士はライバルになるのだが、
別に親しいお菓子達も居たのであった。


ここは千代是伊都砂区御菓子町にある「スーパーコレキヨ」
このスーパーではお菓子の安売りや新商品の最速での仕入れを売りにしていて、もちろんお菓子の競争も激しいのですが・・・
お菓子達はまったりとのんびり過ごしていました。

でも、今朝は少し違うようです。


「最近気づいたんだけどよ。お前臭くないか?」
彼はもろこし輪太郎。コーンポタージュ味のわっかが特徴のスナック菓子です。

「僕ソース味なんだから仕方ないでしょ!」
こちらはソース味で丸いスナック菓子のキャベツ太郎。

「だから臭いんだよ。俺みたいなコンポタになってみろよ」

2人は開店前のお菓子売り場の棚で揉めているようです。
どうやらもろこし輪太郎がふいにキャベツ太郎のソースの臭いを臭く感じたようです。


「おーっす。お前ら朝から何揉めてんだ?」

「あ、蒲焼きさん太郎さんチーッス」

「聞いてくださいよ!コイツが僕のことを臭いとか言うんですよ!」

「てめっ!チクんじゃねーよ!」

「お前らそんなくだらない事で・・・まぁ落ち着けよ」

2人の仲裁に入ったお菓子は蒲焼きさん太郎、蒲焼きのタレが武器のこのスーパーの古参。
言わば、みんなの兄貴的存在ってやつです。


「もろこしもキャベツもどっちも特徴があるんだ。自分と違うものに違和感を覚えるのは当然だろうよ」
「それに、お菓子業界で生き残ってるって事は、悪臭ってわけじゃないんだ。用はお前の好き嫌いって事だよ」

蒲焼きさん太郎はいつもこうしてお菓子同士の揉め事を仲裁したり、困っているお菓子を助けたりしているので、
お菓子達からとても信頼されているのです。

「でも、最近見ないキンサプさんはキャベツ太郎より旨いし、いい匂いだった気がするッス」

「スナックとチョコじゃ比べられないだろうよ。それに、あいつはチョコエッグに負けたんだよ・・・」

キンサプとは、キンダーサプライズという昔日本で流行ったチョコの中におもちゃが入っているお菓子の事です。

「やっぱりキンサプさん負けちゃったんですか・・・僕、応援してたのに・・・」

「日本人には、キンサプのようなアメコミデザインのおもちゃよりも、リアリティある動物のおもちゃの方が合ってたんだろうな」

「でもキンサプさんのおもちゃの質は良かったッスよね」
もろこし輪太郎は昔、キンサプからおもちゃをもらい、そのクオリティによく感動していたのだ。

「これはわさびのり太郎に聞いた話なんだが、会社と契約してる玩具デザイナーが沢山いるんだとよ」

「本当ッスか!?どうりで当たり外れがあるわけだ!」

「僕はジグソーパズルのシリーズはあまり好きじゃなかったですね」

「動物シリーズで、"しっぽを動かすと首も動く"っていうのが定番だったッスよね」

「まぁあの小さいカプセルの中に何を詰め込むかは自由だが、特にカラクリがあるおもちゃは人気が高かったそうだ」

「チョコエッグのおもちゃには仕掛なんて無かったのになぁ」

「特に仕掛けがないシンプルさ、そしてそこにある精巧さがコレクターの収集意欲を沸き立てたんだろうよ」

     

「コレクターの収集意欲ですか・・・」

「どうしたんだ?」

「僕達はおまけがない分、もっと味や食感に力を入れなきゃですね」

「食玩と俺達じゃあ、ステージが違うだろうよ」

「お菓子が食べたいだけの人がわざわざおまけ付きの物は進んで買わないッスよね」

「だから俺達は、今の味を、変わらずに次の次の次のそのまた次の代までずっと続けりゃいいのさ」

「・・・そうですね!」


『いらっしゃいませ!本日もスーパーコレキヨをご利用頂きありがとうございます!当店では――』

スーパーの開店を告げる店内放送が鳴り、沢山のお客さんが入ってきました。
今日は卵の特売日だったのです。

「じゃ、俺はちょっくらフエラムネん所に行ってくるわ」

「フエラムネさんのところッスか?最近よく行くッスよね」

フエラムネとは、口にくわえて息を吹けばホイッスルが如く音を出せるラムネなのです。
ちなみにちょっと癖がある女性で、「変ラム」とか言われてたり。

「前々から呼ばれてたが、最近頻繁に呼ばれる様になっちまってな」

「そ、それってまさか脈アリってやつじゃじゃじゃないですか?」

「それはねーだろうよ。アイツの所に行ってもただテレビ見るだけとかそんなだけだしな」

「何がしたいんスかね。やっぱり何考えてるのかわからないやあの人」

「まぁ俺もアイツと居るのは嫌いじゃないからいいんだけどよ。じゃあ行ってくらぁ」

「いってらっしゃーい」
「いってらっしゃいッスー」

そう言って蒲焼きさん太郎はフエラムネの居る駄菓子コーナーへ行ってしまいました。

「ねぇもろこし」
「なんだよ」

「今日、新入りが来るって聞いたけどどんな人かな?」

「あ!そういえば店長がそんな事言ってたな。蒲焼きさん太郎さんに聞けばよかったじゃん」

「うーん・・・聞いとけばよかった。どんな人だろ、男かな女かな」

「俺としちゃあ、女がいいなぁ!袋菓子のコーナーは男が多くて」

「確かにそうだね・・・堅揚げさんは女性と呼べるような人では・・・」


「アタシがどうしたってんだい」

「!!!」

いきなり後ろから現れた堅揚げと呼ばれた女性は「堅揚げポテト」
口より先に手が出る人です。
今もキャベツ太郎ともろこし輪太郎を殴り飛ばし、去っていってしまいました。


「いててて・・・わっかが全て破損した・・・」

「中身が粉になっちゃったよ・・・」

「そういえばキャベツ太郎を粉にしてご飯にかけるとうまいぜ」

「それはない・・・」


     



所変わってここはスーパーの裏口。
トラックから下ろされた品物が大量にここを通っていきます。

「るーるる、るーるる、るーるーるー」

のんきに歌いながら商品を運んでいるのは副店長さんです。
副店長ながらも雑用をこなしたりパートの店員さんにまで気遣いをよくするので
みんなから親しまれてる29歳独身男性。

「さーて、今日のお菓子コーナーの新入りはこの子達だね」

「我輩、この度スーパーコレキヨにて奉公いたす、じゃがりこナリ」

「うんうん、定番ながらもやっとウチにも来てくれたんだね」

「よろしくお願いするナリよ」

この副店長さん、お菓子と会話していますね。
普通、お菓子ががんばっているオーラや気合は伝わるのですが、会話は人には聞こえません。
しかしこの副店長、幼い頃からお菓子と会話ができました。
今日は誰が気合が入っているのか、他人人よりも詳しくわかったのでその日に売り出すお菓子を決められたのです。
そうしてお菓子売り場のバイトから副店長までのし上がったのです。

「じゃあ、お菓子コーナーへ行こうか」

「はいナリ」
副店長さんは台車にダンボールを乗せ、じゃがりことお菓子コーナーへ行きました。



「おい!新入りがきたぜ!」

「どんな人だろう・・・」

副店長さんは新商品のコーナーにじゃがりこを並べ始めました。

「みなさんこんにちわーナリ!じゃがりこと申すナリ!以後よろしくナリ!」
棚に並べられた瞬間に大声でお店中に挨拶をしたじゃがりこでした。


「変なやつきちゃった」

「クセがありそうな人だね」

「でもよ、今更じゃがりこって・・・」

「今までカップのお菓子ってあまりなかったよね。これから強化するのかな?」

「じゃがりこに限らず、カップ型のお菓子は最近人気が高いんじゃねえかって思うぜ」

「うん。僕もそう思うよ。カップ型だから持ち歩いて食べやすいのかもね」

「袋みたいに中身が割れにくいし、スティック状だからつまみやすいな」

「スティックの方向を揃えられるって点では、カップは優秀だよね」

「あ!あと色んな味があるよな!地方限定のやつとかさ」

「確かに地方限定は強いよね、ねぎ焼き、野沢菜、手羽先・・・」

「コンビニ限定の味を出すことで売り上げを伸ばしてたなぁ」


「よし、僕も地域限定やコンビニ限定の味を出してみよう」

「地域限定ってキャベツに地域レパートリーなんてないだろ」

「群馬限定嬬恋キャベツ味」




       

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