Neetel Inside 文芸新都
表紙

ある阿呆
♯1

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 文章を描き出すことにより、何かこの苦痛を拭い去ることができるのだろうか。
 10代において、社会への恐れを感じなく怒りを感じるだけでやり過ごすことができた。そして自分自身への畏怖を忘れさることができ、何かを振り払うようにして生きてきた。



 生ぬるい風が吹きぬける。一年の四季の中で梅雨のじめっとした空気が一番嫌いだ。今日も相も変わらず高瀬川に行き、蛍を見ながら、缶ビール片手に、煙草を吸う。そんな自分に酔ってみる。

 蛍が死ぬところ・・・

 蛍が好きだ。蛍は綺麗だ。ゴキブリを小さくしたような風貌なのに、暗闇の中で光を燈している。そして、短命。少しずつほんの少しずつ光が弱っていき川に流されていく。それでも少しの間川の中で光っていて、やがて暗闇に呑みこまれて逝く。そんな死にかたが好きだ。

 「ややこしいな。」

 一人呟いてみる。
 せんちめんたるろんりーろんりー。



 目に映らぬままに、溜まっていくフラストレーション。音楽をやっているときだけはそれを麻痺させることができ、逃避行へと旅立つことができた。当時僕は巨大な力と戦っているつもりだった。今になって逃げると感じるようになったのは退化なのか、進化なのかわからない。
 ただあの頃にもう戻ることはできない。

 物語の最初なんてそんなものだろうか。この世の果ての感じはこんなだろうか。いや、ただの稚拙な独り言だろうか。

       

表紙

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Neetsha