05 よいではないか、よいではないか、そちのことを教えてたもれ

 俺はまだ昼の2時なのに部活を終えて帰路についている。理由は顧問が急に体調を崩して、顧問が来ないので練習が休みになったからだ。
 俺は当然のように他人の都合で練習が休みになったのだからイライラしていた。でも家について10秒でそんなことは忘れてしまった。

「うげぇっ!」
 まず俺の耳に入ったのは不機嫌そうな兄オタの呻き声、リビングの方からだ。俺が玄関を開けた音に対する反応だろうか?
「どうも、おじゃましてます」
 次に俺の耳に入ったのはとても優しそうな女の声、若いような気がした。
 ん?女?しかも若いだと?なにかおかしくないか?
「おかえり・・・」
 兄オタが不機嫌そうな声を出した理由がわかった。兄オタが座っているソファに一緒に座っているのは女だ。しかも兄オタと同年代と見た。オマケに・・いや、大事なとことだ、めちゃくちゃ美人じゃねぇか!
 なるほどなるほど、これで不機嫌の理由はわかった。でも忘れてないか?その理由が成立しているのがおかしいことに、
「ああ、弟、このことは母さんには言うなよ、いろいろややこしいから。そして我々は俺の部屋に行くから弟はリビングでゆっくりしていってね!」
 そういうと兄オタは女の手を引いて二階への階段を登っていった。
「・・・よし、まずはよし、冷静になろう。そして素数を数え・・・じゃなくて考えるんだ。今日は夜遅くまで両親は帰ってこない、そして俺も本来はそうだった。本来なら兄オタと女は一つ屋根の下に二人っきりだ。若い男女が?そうしたら?やることは?ひとつ?」
 そうか!兄オタはセクロスするためにあの女を家に呼んだんだ!そうか、そうだったのか、それならそうといってくれればいいのに・・・
 あれ?何か忘れてないか?兄オタはアニオタだぞ、彼女なんてできるわけないじゃん。TVとかで散々叩かれてるオタクと付き合う女がいるわけないじゃん、そんなのエルメスたんだけだろ!
 ええっと、後考えられるのは・・・
「っ!!そうか!その手があったか!」
 しかし、それは最終手段だぞ?いくらなんでも普通の人間がするのか?
 いや、する!兄オタは普通じゃない!
「我が家の恥さらしがっ・・・!」
 俺は怒りに任せてドシンドシンと地響きを鳴らしながら兄オタの部屋の扉を力いっぱい開けてこう叫んでやった。
「兄オタ!援交なんて見損なったぞ!てめぇなんて兄オタですらねぇ!ただのオタクだ!」
 懸命な読者はもうお気づきであろう、こういう流れが物語で展開されると大抵が勘違いであるということに。そう、これもその一例である。
「弟よ、お前は何を言っている?お前の兄はそんな最低の野郎だったのか?」
「最低の野郎だ!でも、この流れは・・・」
 現実(リアル)において行動の後に気づくのは遅すぎなのである。二次元(バーチャル)ではリセットというボタンが用意されてるが現実(リアル)にはそんなものなど存在しない。この遅さは致命傷である、シューティングゲームにおいてのコンマ1秒といえば一部の読者にはこの傷の深さが理解できるであろう。ちなみに著者は理解できない。
「弟よ、お前は間違っているぞ!いくら最低の私でもそんなことはしない、それに私がそんなロマンのかけらもない出会いを求めると思うか?俺はロマンチストなのだ!」
 ロマンがどうこうはよくわからなかったが、俺が勘違いをしているのだけは理解した。でもそれだとひとつ疑問が残る。
「兄オタ、ごめん。そこまでの最低人間じゃなかったんだな。それでさ、ひとつ聞きたいんだけど・・・」
「ん?なんだ?言ってみろ、言いにくいのか?」
 そりゃ言いにくいよ!その部屋の奥でこの兄弟の揉め事を微笑んでいらっしゃる美しい女性とどういう関係にあられるかなんて質問したくないよ!
「あのさ・・・」
 でも質問するよ、俺はするよ、だってこんなネタめったにないぜ!聞くに決まってるだろうが!
「その部屋の奥でこの兄弟の揉め事を微笑んでいらっしゃる美しい女性とどういう関係にあられるのですか?」
「ん?もう一回言って?」
「その部屋の奥でこの兄弟の揉め事を微笑んでいらっしゃる美しい女性と・・・」
「ハァ!?だれが美しいって!?」
 兄オタにしてはめずらしく俺の話を途中で止めてしゃべりだした。
「そんなこと言わないでくださいよ、ひどいじゃないですか?」
 女が話し出した。やっぱり綺麗な声だ、しかもしゃべりかたも上品だ。
「だまれフジョシ!お前にはひどいという言葉を使うのももったいないわ!なんで『からくりサーカス』の鳴海と勝でびぃえるとか妄想できるんだよ!」
 フジョシ?びぃえる?よくわからない単語が出てきた。
「そうですか?よく読みなおせばそういう描写がチラホラ・・・」
「そんな描写いくら探してもないから!」
「兄オタ、フジョシとかびぃえるってなんだ?」
「お前は知らなくていいことだ!」
「そんなことよりさっきからの会話見てると兄オタ×弟でもいいような気がしてきたわ」
「どこがだ!お前の妄想力はもっとマシなところにつかえないのか!」
「それって人のこと言えるの?」
「兄オタ、×ってなんだ?それにこの女性との関係も聞いてないんだけど」
「ただいま~!」
 あ、親帰ってきた。
「あ~!!チクショ~!!なんか色々メンドクセ~!!!」
 兄オタが・・・壊れた・・・・





後半へ続く  
sage