Neetel Inside 文芸新都
表紙

S・S・D・S
視える

見開き   最大化      

 少し前の話だ。


 周りの声に耳を傾ける。

「昨日の心霊番組見た? チョー怖かったよね!」

 周りの声に耳を傾ける。

「次の休みに肝試し行こうぜ?」

 周りの声に耳を傾ける。

「うちの家系、代々霊感あるんだってぇ」

 ――うるさい……うるさい、うるさい!

 初夏にもなるとこんな話で皆が賑わう。
 心霊番組も肝試しも、視る事が無いから楽しめるんだ。
 そんなの怖いだけでちっとも楽しくない。

 ――お前らに何が視えると言うんだっ!!

 クラスの奴らには視えもしないし、聴こえもしない。だから触られもしない。
 こんな奴らに俺の苦悩を打ち明けても、何の頼りにもならない。
 だから誰とも親しくならない。

 ――『あははは、お前には友達が居ないのか?』

 また『あいつら』が話しかけてくる。
 遂には学校でまで話しかけられるようになった。
 そろそろ俺は『こいつら』に喰われるのかもしれない。

 ――もう沢山だっ!!


 だから俺は、真っ白い部屋に閉じ込められている。
 ここは心地良い。自由に出入りは出来ないが、視える人が沢山居る。
 しかし視えてるものは別なものらしく、人によって様々だ。きっと『あいつら』は人によって視え方が違うんだろう。


 隣の部屋に居た男がここを出る事になったそうだ。俺の所に挨拶に来た。
「君も早くここを出れるといいね」
「俺は望んでここに居ますから」
「僕はもうこんな所はゴメンだなぁ。通院で十分だよ」

 ――通院?

「そろそろバスの時間だ。僕はもう行くね」

 ――待って……行かないでくれ。

「あなたには視る資格なんてなかったんだっ!!」

 ――そんなもの、誰も望んじゃいない。

 男は振り返り哀れんだような、蔑んだような眼で僕見てからまた歩き出す。

 ――『お前は本当に面白いな』

 また『あいつら』が蠢き出した。

       

表紙
Tweet

Neetsha