Neetel Inside 文芸新都
表紙

よめえごと
第六話

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 東京だからだろう。平日の昼間だと言うのに街には人がたくさんいた。
 これには困った。なぜならば俺は人が多いところが嫌いだからだ。皆に自分が見られているような気がしていい気分がしない。そんなことを考えているといつのまにかコンビニに着いていた。
 コンビニに入った俺はまずヤクルトを手にした。その後店内をうろつきさまざまなものを買った。
 ふと手に取った週刊誌で俺はいやなものを目にしてしまった。
 それは俺が起こした事件の記事だった。さまざまな言葉が俺の心をさしたが、一番ショックだったのは俺が殺した子供の母親の写真である。魂が抜けたように呆然としていて、親族の人に支えられて何とか立っている写真である。その写真の下には母親の久美子さんは事件後何も食べなくなりやせ衰えたと書かれてあった。
 事件のことが思い出される。俺が二人を殺したときのことが蘇ってきた。それを何とか頭からたたき出そうとしたが無駄だった。
 俺は吐き気がしてきた。カゴをとりあえずそこらへんに置きトイレに駆け込む。げぇげぇと吐く。延々と吐く。吐き続ける。やがて何とか収まってきた。俺はトイレを出た。カゴを手にレジへと向かった。
 まだ若いアルバイトの店員は俺が近づいてくると露骨にいやな顔をした。まだ、げろのにおいがしているのだろう。しょうがないことだとは分かっているがいい気分はしない。
 
 ネットカフェに帰ると今度はパックコースを利用した。こちらのほうが金を使わなくてすむのだ。さっきとは別の部屋に入りパソコンを始めた。好きなサイトをみて、笑いコンビニで買ってきたお菓子を食べる。そんなことをやっているともう夕方になってしまった。
 今度は俺はカレーを頼んだ。なかなか上手い。しかし、そんな俺の浮ついた気持ちをあるニュースが現実へと引き戻した。
 そのニュースとは殺人を犯し一二年間逃げ続けてきた男が捕まったというニュースだった。さまざまな偽名を使って逃げていたらしい。
 一二年間逃げ続けても逮捕されてしまうのだ。そう思うとどうしようもなく思えてきた。俺は自首しよう。そう思った。
 
 俺はタクシーで警察署へと向かった。だが、しかしそこから先はへと進めない。俺は数分間あたりをうろうろした後、またタクシーに乗ってネットカフェへと戻ってきてしまった。
 俺は自分のだめさ加減を呪った。あそこまで行ったのになぜ戻ってきてしまった。もうだめだ。どうしようもない。このままでは‥‥。
 俺は死ぬ決意を固めた。もう死ぬしかないのだ。俺のような世の中の屑が生きていても世間に迷惑をかけるだけだ。
 コンビニで子供の母親の写真を見たときはあんなに罪悪感があったというのにネットカフェへと戻ってきたらすぐに忘れてしまった。そして栃木と同じような生活をしようとしていた。人を殺したというのに。
 俺はとんでもない極悪人だ。死ぬしかない。どこで死のうか。そう考えると樹海と言う答えが出てきた。何しろ俺は別にこれまでに死のうと考えたことはない。なので自殺をする場所といったら樹海ぐらいしか思い浮かばないのだ。

 樹海への行き方を俺はネットで検索した。どうやら河口湖駅という駅が最寄り駅らしい。その駅への行き方も当然調べる。どうやら二時間半ほどでつけるらしい。そこからはタクシーで行けばいいだろう。俺はそう考えた。
 東京駅に向かうため俺はネットカフェを出た。もうここに戻ってくることはないだろう。

       

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