Neetel Inside ニートノベル
表紙

勇者ときどき小説家
イロナシ

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私は誰なんだろう。
欠落。
なかっただんよ、最初っから。
皆が持っているものをさ。
うんうん、別に目に見えるものだけがものじゃなくて。
『イロナシ』。
皮肉めいてるよね、でも嫌いじゃないよ……?
私はそう呼ばれていた。

私の住む世界『都会』。
辺りにはコンクリートで舗装された道路、それに沢山の高層ビルが建ち並んでいる。
そして人々はせわしなくあっちへ行ったりこっちへ行ったりだ。
そしてそれらは全部、灰色をしていた。
ただ一人、私を除いては。

私は見つめていた。
ずっと、ずっとだ。
そう、それはとても非現実的で。
けれども私にとっては現実だ。
現実ってそれじゃあ何? 決めた人はだぁれ?
スクランブル交差点のちょうど真ん中。
八方からのクラクションを受けながら私は行きかう人々を見つめていた。
皆灰色をしているのはしなくちゃいけないからだと思っているらしい。
灰色にするよりも、しないほうがとても困るのだと。

「それじゃあ、なんでしなくちゃいけないの?」
「ソレハシナクチャイケナイカラダヨ」

誰に聞いても皆そう答える。

――ほら、やっぱり貴方達はなにもわかってないじゃない――

「つまりね、貴方達はわかっているとわからさせられているのよ」

すると皆は。
ほら、また『イロナシ』が何か言っていると言って。
忙しそうな波の中へと。
消えていってしまうんだ。

私は望まない、灰色にはならない。
灰色でいることと、まっしろでいること。

――苦しみを決めるのは、私なのだから――

       

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