Neetel Inside 文芸新都
表紙

黄昏スーサイド
Epilogue

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「はい、じゃあ、誰とでもいいから二人組みになって」
 体育教師のその言葉に茜はうんざりとした。
 こういう時、自分は最後に余ってしまうのが常で、いつも体育教師が困ったように、
「じゃあ、お前は一人でやれる範囲でやれ」
 と困ったような、見下しているような言い方をする。
 それに茜は苛立ちを覚えるのだが、しかし彼女と組もうとするような相手などいないので結局彼女は「はい」と言うしかないのだが、その日は珍しく声をかけられた。
「ねぇ、あんたあいてんの?」
「え、あ、うん」
「じゃあ、私と組んでよ」
 茜は――なぜか分からないが――不機嫌そうな顔でそう言ってくるクラスメイトの怜を驚きながら見つめた。
「なに?」
「う、ううん、なんでも」
「で、組むの? 嫌ならいいんだけど」
「あ、うん、いいよ」
 最近彼女はどういう理由があるのか知らないが、学校によく顔を出すようになった。茜からは細かくは分からないものの以前と比べると化粧も心なしか薄くなったように見える。
 聞いた噂では誰とでも寝るはずだった女が特定の彼氏を作り、その彼に学校に行くように言われたからだ、とも言われているが実際にその通りなのかは彼女に分かる由もない。
 どうやら自分達の組が最後だったようで誰も残っていない事を教師が確認すると柔軟体操をするようにと声を出している。
(……私しかいなかったからしょうがないけど)
 背中合わせになり腕を組んで腰を折り曲げた。怜の体重を背中に感じながら彼女は溜め息を吐く。
(……一人でも、二人になってもやっぱり苦痛は変わらない)
「あー、めんどい」
 整列をしながら、すぐ傍で堂々とそう零している彼女を見る事もなく、茜は鬱々と思う。
(多分、私もこの子も生きる価値、ない)
 それは願望だろうか。
 だが例え怜は彼女に「お前には生きる価値がない」と言われたとしてもきっと動じる事などないのだろう。
(早く終わらないかな)
 怜は、隣にいる女の事などどうでもいいと言うように気だるい表情を浮かべながら、学校が終わってから彼氏の家に行こうかどうかとそんな事ばかり考えている。
 もし、二人のどちらかがお互いの内に秘めている事を話す事があったとしたら?
 自分の存在が誰かを殺すきっかけになったという事を知る機会があったとしたら?


 それでも。
(なに、こいつ、辛気臭い顔して。うざ……)
 怜は選ぶ相手を間違えたと後悔しながら、早く授業が終わればいいと思う。
 やる気のなさに気がついたのか、体育教師が「此花真面目にやれ!」と叫んでいた。
 彼女はそれにうんざりしながら、その剣幕から逃れるように天を仰ぐ。
 以前よりも少し、綺麗に見える空くらいしか見たいと思うようなものがない場所で怜はやる気のない返事を返した。
「はーい」






[Slowly suicide in the red & twilight. closed]

       

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