Neetel Inside 文芸新都
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アンド・ユア・バード・キャン・シング
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夏だ。

昨日は席替えがあった。
知っての通り席替えとは、中学生にとってペルセウス座流星群に匹敵するほどの一大イベントで、教室内はすっかりお祭り状態であった。
お祭り好きの浜田が机に上って奇妙な歌を叫びながら服を脱ぎ始めたが、誰も気にしていなかったほどだ。

そんな中で僕は運悪くも、西日がこれでもかといわんばかりに照りつける、いわゆる「ハズレ席」を引いてしまった。
ふと隣の席の関谷を見ると、死神とでも目があったかのような表情で僕から目をそらした。

僕はクラスメイトと話すのでさえ多少緊張してしまうようなウブな少年であるが、勇気を持って話しかけてみることにした。

「おい、関谷、お前何番か?」
「山本君には関係ないだろ」
「お前バンジーやりたいか?バンジージャンプ、紐なしぞ」
「う・・・勝手に見ろよ・・・」
「どれどれ・・・うお!!38番じゃねえか!!」

38番とは窓側最後尾に加え、窓に隣接する木が日光を完全に遮り、優雅な昼下がりを堪能することができるというスペシャルな席だった。

「隠してた罰として、俺の席と交換やな、日当たり良好の良質物件だからな、よかったな」
「やめてよ・・・不正したって先生に言うよ?」
「おいおいおい、お前またあれがやりたいのか?前回は大好評だったからな、今度は学年中の女子が来たがるぞ、お前のオナニーショウは人気だからな」
「え・・・」
「お前がやりたがる気持ちもわからんでもないが、お前それは変態ってやつだからな、露出狂だぞ。しかし本当は身を挺してでも止めなきゃいけないんだろうが、お前がそんなにやりたいんだったら、俺には止めることはできんな、非常に残念だ・・・」
「うう・・・」

こうして僕は関谷の性癖が暴走するのを食い止めることに成功した上に、最高の席で今授業を受けている。


英語教師の山内は、教科書の例文の音読をするようにと田辺さんを指名した。
田辺さんはまるで刑務を全うする受刑者のような真剣な表情で立ち上がると、小鳥のさえずりのような美しい声で音読を始めた。優等生である。

数ヶ月前、田辺さんについてある噂が流れたことがあった。
「田辺さんが飼っている愛らしいプードルは、実はバター犬である」などという、なんとも下衆な噂だったが、僕だってそんな下衆な噂を流したくて流したわけじゃない。

あまりにも皆がバター犬について無知であったがために、教えたがりの僕としては、毎日愛犬の散歩を欠かさない田辺さんという身近な例を用いて説明しただけであるのに、馬鹿な群集どもは黄金郷に辿り着いた海賊のように目を輝かせながら、僕の作り話をまるっきり信じてしまったわけだ。

申し訳ないことに、それからしばらくすると、田辺さんが愛犬の散歩をすることはなくなってしまった。
今のうちに謝っておいたほうがいいのかもしれない。

僕が心の中で田辺さんに謝っていると、田辺さんの音読は終わってしまった。

窓からは、気持ちのいい風が流れた。


       

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