Neetel Inside ニートノベル
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Year
第4話 あなたと手をつなぎたいから

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 生徒会室を後にした俺は校門へ向かっていた。
「早く買って帰らないと晩飯食えなくなるよ」
 すでに、日は傾きかけていた。
 自分に急ぐようにと言い聞かせるようにと、俺は早足になっていた。
「おっ、あれは」
 校門へ到達した俺は、男子生徒に絡まれている愛花を発見した。
 兄という立場上、妹が他の男と一緒にいるのは、許したくはないのだが、何せ愛花はモテる。
 かわいさでは、学校でもトップクラスの分類に入るらしい。噂では、ファンクラブがあるとまで言われている。
 俺も素直にかわいいと思う人間の一人であったりする。
 とまぁ、俺は頻繁に絡まれている姿を見ているので、仕方のない事だと思っている。
 それに、もうすぐ16歳になる愛花だ。彼氏の一人や二人いてもおかしくないだろう。
 俺が気にする必要はない。
 と、急いでいるせいもあるのか、俺は二人を構わずに行こうとした。
 すると、愛花が、
「待って!お兄ちゃん!!」
「んっ?」
 俺を呼び止めた。何か、用事でもあったか?
「一緒に帰ろうよ!!」
 何故だか、愛花はその男子生徒ではなく、俺と帰ろうと言ってきたのだ。
「いや!俺と帰るんじゃ・・・・・・」
 当然のように、男子生徒は愛花に自分と帰ろうと言う。
 第三者である俺が口出しする事は、野募だと思ったので黙ってこの状況を見つめる事にした。
 しかし、あっという間に結末を迎えるのだ。
「あなたと帰る約束はしていないし、そもそも、あなたに興味ないから。お兄ちゃん行こっ!!」
「えっ・・・・・・」
 きっぱりと止めの台詞を突きつけた愛花。男子生徒は固まってしまっていた。
 普通、かわいくて人気のある人は中身までも、かわいくしようと偽る。そうすれば、もっと人気が出るからだ。
 しかし、愛花は違う。自分の嫌な事は、はっきりと嫌と言える子なのだ。
 そんな妹を持てて、俺は誇りに思う。
「ごめんなさいね」
 決着が着いたので、俺は男子生徒に、妹と一緒に帰れなくてごめんねと言う意味を込めて、ごめんなさいねと謝った。
 まだ、男子生徒は固まったままだったが、いつまでも相手をしていられないので、そっとしておいた。
 そして、俺たち二人は学校を後にした。

     

「良かったのか?」
 一応、聞いてはみる。
「うん、もう3度目だったから」
「そうか」
 俺はそれ以上は言わなかった。多分、愛花はその男子生徒に迷惑していたと思ったから。
 あの場から逃げたかったから、俺に帰ろうと言ったのだと。
 俺はとりあえず、この場の空気を変えようと、買い物の話を出すことにした。
「そういえばさぁ、あやねぇが帰りに夕食の材料を買って来いって言ってたんだけど」
「うん、いいよ」
 愛花は快く承諾した。その姿を見て、俺は安心した。
「急がないと、晩飯食べられなくなるからダッシュな!!」
「嫌だよぉ!!だって、お兄ちゃん朝、私を置いていったじゃん!!」
「そうだったけ?」
「そうだよ」
「ははは」
「ふふふっ」
 自然と俺と愛花からは笑みがこぼれていた。
 もう、俺は時間の事は気にならなかった。

     

「じゃあさぁ、走るのは辞めて、手をつないで行こうよ!!」
「何でそうなるんだよ!!」
 突然、手をつなごうと言われても、はいそうですかとはいかないものだ。
 愛花の意図が全く見えない。
「だって・・・・・・寒いんだもん」
「お前、冷え性だもんな」
 愛花が冷え性なのは事実だ。その上、校門でずっと立っていたなら、それだけでも寒いはずだ。
 寒そうに立っていた愛花の姿が浮かんできた。
「だからさ・・・・・・」
「でも、断る!!」
「何でよ!!」
「やらないって言ったらやらないの!!」
 俺がカイロの代わりになるというなら使って欲しい。
 だが、それよりも恥じらいが勝っていた。
 この歳で、兄と妹が手をつないでいるところをクラスメイトに知られたら・・・・・・一生の不覚だと思う。
 だから、俺は愛花と手をつなぐ事は出来ないのだ。
「はぁい・・・・・・」
 愛花はしゅんとしてしまった。
 少し強く言い過ぎたか?
 でも、嫌な事を嫌と言うのは間違っていないと思う。
 そんな事を自分に言い聞かせながら俺たちは歩き続けた。

     

 あれから、4、5分たった。
 その間は無言が続いていた。
 俺が招いてしまった結果。なんとかしないとな。
「今日から、お前が見たいって言っていたドラマが始まるな」
「・・・・・・」
 返事が返ってこない。このドラマは必ず、全話録画するって言ってたから、食いつくと思ったんだけどなぁ、不発だった。
 乙女心は複雑だわ。
「なぁ、愛花?」
「・・・・・・ぅぅ」
 返事が返って来ないだけではなかった。愛花の瞳には涙が浮かんでいた。
 泣いてる?
 俺が泣かせたの?
 理由が分からない。
 やっぱり、乙女心は分からない。
 だけど一つだけ分かっていた事があった。
 それは・・・・・・

     

 『俺はお前の涙に弱いんだよ!!』

「えっ?」
 俺は愛花の手をつないでいた。
 手をつなぐのは嫌だ。
 でも、愛花の涙を見るのはもっと嫌だ。
「どうかしたか?」
「いや、何にも・・・・・・。手あったかいね」
「お前は冷たいな」
「だって」
「冷え性だもんな」
 俺たちを照らしていた夕日はもう沈もうとしていた。

                次回 第5話 花見 へつづく


第4話を書き終えて

頑張ってシリアスっぽさを出して書きました。
が、何か足りない感じです・・・・・・。
文章力は間違いないなく足りないです。
後は、ラブコメに対する愛かな?
これとは別に、Year ―Heroine's Story― で愛花視点で同じ話を書いているので宜しければ見てやって下さい。
最後まで見て頂きありがとうございました。では、次回。


その後・・・

「ただいま~♪アレ?」
 あやねぇが帰ってきた。が、俺たちはまだ帰ってきていなかった。
「お姉ちゃん蚊帳の外・・・・・・」
                                        おわり

       

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