どうにかトイレへ行くことが出来る。
ここまで長かった……。
ような気がした。
そんな軽い安堵感を抱きながらトイレに行く。
個室の扉を見る。
……そして絶望した。
個室が全部埋まっているのだった。
一瞬、浅田が少し憎くなった。
仕方なく、下の階へ出向く。
この時点で相当腹に痛みが押し寄せている。
トイレに入る。
…絶望。
今度は個室に、人が並んでいて、ちょっとした列になっていた。
いや、なんで並んでんだよ。
そんなことを思ったが、俺には、どうでもいい事だった。
また仕方なく今度は1階へ降りる。
下腹部の痛みは、更なる高みへと登っている。
またどうせ並んでいるんだろう、と思ったが、
そうではなかった。
それどころか、二つある個室の、両方とも開いていた。
それを確認して、俺は、長かった……と心の中でつぶやき、
痛みからの解放へと向かっていった。
……不覚にも快感を覚えた。
痛みに耐えた後の幸福ほど、美味しいものはない。
そう確信できるほどだった。
ようやく呪縛から開放され、俺の心は幸せに満ちていた。
そして、その幸せは、俺が視線を移して手を伸ばそうとした瞬間、
見事なまでに砕け散った。
……紙がない。
なぜ2階で、列が出来ていたのか、その理由が、分かった気がした。