Neetel Inside ニートノベル
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 ここは駅前のたこ焼き屋。4組の優勝を祝って、3組だけでたこ焼きにかじりついている。その中で、大野さんが楽しそうに、今日のことを聞いていた。
「スゲー面白そうやな」
「いやー、楽しかったもん」
 中嶋は興奮覚めやらぬ声で、ただ今にも飛び跳ねるように言った。
「……沢辺、斉藤は?」
 西野が俺の方を振り返った。
「ちゃーんと、話しといたよ。これから、多分忙しくなるかもしれないともね」
「全く、他人の人生ひん曲げちゃうことになっちゃったね」
「まあ、忙しくなろうが、それできっかけ掴めたら、後はなるようになる」
 大野さんは、でも、そいつ災難やったなぁ、と苦笑いをした。
 その後は、斉藤次第。そんな風に感慨に浸っていると、渡辺がおずおずと前に出た。
「……あの、喜多君は?」
「あいつ、『やっぱり野球おもしれーから』ってもう一回入部届け出しに行ったよ。なんだかなー、あいつ、そう言うとこに引け目も糞もねーのな」
 浅田が呆れ調子で口を開く。
「でもさ、あーいう感じ、いいよねー。人生やり直してるみたいだもん!!」
 中嶋が空を見上げる。
 やり直す……か。もう一回過去からやり直すのとは少し物が違うけど、でも、確かにそれは『やり直している』事になるんだろう。なんか、咀嚼するたびに言葉の意味が深くなっていきそうだ。
「なーにが人生やり直せるだ。だったら、俺はもう一回小学生したいね」
 浅田がひねくれ口を叩くと、西野がにやっと笑った。
「何言ってんの? そうじゃなくて、半日ぐらいで十分じゃない」
 西野に言われ、浅田はむっとする。
「どー言う意……」
 しかし、次の瞬間、浅田に思い当たる節があったようだ。一瞬にして青ざめた浅田に、中嶋もニヤリとする。
「……本気で戻りてーよ」
「さ、行こーよ、今から4組打ち上げだって言うからさ……アタシ、すっごい楽しみなんだから!!」
「ほらほら、約束は守らないとね……?」
「やめろ!! 俺は、俺は……嫌だ死にたくないぃぃぃ!! 沢辺、助けてくれぇぇぇ!!」
 まるで歯医者に無理やり連れて行かされている小学生のように浅田が引き摺られて行くのを見て、大野さんが聞いてきた。
「あのアホに、何があったんや」
「実はですね……」
 事情を話し終えると、大野さんは呆れたと言わんばかりの顔で、呟いた。
「ホンマにアホやな……」
 俺はずるずる引き摺られて行くのを見ながら、呟いた。
「まあ、コレで一件落着、てとこかな」
「俺は何も解決してねぇぇよぉぉ!!」
 地獄耳の浅田が、断末魔の叫びを上げた。




 行動するキッカケを逃すな。
――ウィリアム・ジェームズ


 ミンティオは浅田が見事にやり遂げました。
――喜多秀俊

 俺、もうちょっと慎重になるわ。
――浅田勝人

 ……いつからフリートークの場になったんだよ。
――沢辺直人

       

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