またとある日――放課後の職員室にて。
今度は学級日誌を届けに行くと――
『民玉党の何某が議会で足を怪我、暴力行為をしたとして誰某を懲戒処分』
と言うアナウンス。
つーか、何で職員室にだけテレビがあるんだよ。
そして、その時の議論のVTR。
『この議題は――』
『おかしい、これもう――』
「凄いな、質問攻めだ。さすがは若い人って、力在るよね」
と言うのは、女英語教師、柳先生。
「いやいや、中年老人問わず、あそこの人たちはパワフルだからなぁ」
クラスの担任、鳴海先生も感心する。
「政治家も簡単じゃないですねー」
柳先生はため息をつく。
「もしかして柳、政治家になりたかったのか?」
「ええ、まぁ、なんですけど、
でも、生徒に向かって『永遠の20歳』って言うのも夢だったんです」
「すごいマニアックな夢だな」
「でも、政治家にならなくて、正解でしたよ。あんな猛獣だらけのところ嫌ですもん」
「素質はあると思うがね」
校長が首を覗かせる。
「なんですかそれ。私、そんなに凶暴ですか」
「うちの嫁なんて猛獣通り越して鬼だからね。柳君にはそうなってほしくない。将来の夫のためにも」
どんな人生訓だよ。
『だからこれは――』
『これにて質疑を打ち切ります』
『ちょっと待て! それはおかしいでし――』
『それでは、この議題に賛成の方は起立して下さい』
『議長! 待って下さい!』
『賛成多数とみなし――』
「うっわーこれはないわー」
柳先生がしかめっ面をする。
「冷たいですよね。まぁ、国会は元より汚いですけどね、牛歩やら野次やら何から何まで」
生物の米田先生がいう。
「へぇ、そーなんですか」
そこに、
「あっ今転んだ!」
そして、スローモーションが映された。
どう見ても、転んだ本人が押された、と言うより、横にいる人が押され、それに反応して
転んだとしか思えない。
「やっぱ、ないわ」
「なんかサッカーのファール見てるような気分だな」
柳と鳴海がテレビ画面にかじりついている。
その時、
米田先生が動いた。
その手に持っていた部活の事務関係の書類を、同じ部活の顧問の鳴海先生の机にそっと置いたのだった。
そして、元いたところにさっと戻り、コーヒーカップ片手にくつろぎ始めた。
転ぶ人みたいにあからさまな事する人いるけど、
その影で誰も知らないところでズルをする人もいるのか。
怖いな、世の中。