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何某の日常
何某の職員室:4

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 中嶋からパシられ行った職員室で。

『三角諸島の領海問題で、そのビデオを流出させた犯人が捕まりました』

「お、やっとか」
 コーヒーを一口飲んだ校長先生が言う。
「なんで見せないんですか? 見せたって良いのに」
 柳先生が首を傾げた。
「たぶん、日本としては、このままうやむやにしたかったんだろうな」
 校長先生が言う。
 米田先生曰く、一応、校長先生は社会の教科ひとしきりの免許をもっているらしい。
 そう思っている内に、話題はデモ騒動についてになっていた。
「デモだって、中国の総人口の割合で言えば1%位のものだし、デモを知らない中国人もいる。私としては、日本のメディアが騒いでるだけに思えるんだがね」
「専門家は皆、貧困のせいだって言ってますよね」
 米田先生も付け加える。
「へぇ。考えて見たら、中国の人口の1%でも、東京と同じだけいるんですよね」
「でも、中国が悪くないとは言えないな」
「確かに。あの動画見る限り、ぶつかってきてるのは分かるね」
 などと会話している内、鳴海先生が紙袋を携えて入ってきた。
「や、おはよう」
「あっ、サッカー部の遠征お疲れさま」
「どうだった、全国区は」
「強かったの一言ですよ。あ、そうだ、お土産買ってきたんで、良かったら食べてください」
 中身はタルトだった。
「おっ、美味しそうだな」
 校長先生が一番に飛び付いた。
「あ、私も!」
 先生達が集まって来た。
「なあに、これ?」
 そのちょっと後にやって来たのは、物理の中垣内先生。
「あ、これはな、鳴海先生のサッカー遠征のお土産だよ」
「ふーん」
 そう言って中垣内先生がお土産の方を見ると、米田先生が最後の1個を手に取ろうとしていた。
「ちょっと、待ちなさいよ。私、まだ1個も食べてないんだけど」
「え? 私もだよ」
「嘘ばっかり。本当は食べたんでしょ」
「違う。そう言うあなたも、食べたのでは」
「バカね。私はさっき来たばかりなのよ! どうやって食べるのよ!」
「それでは、どうして1個足りないのですか」
「知りませんよ!!」
そう言って、中垣内先生は米田先生のタルトを引ったくり、それを口の中に放り込んだ。
「あ!! よくも……!!」
「あら、すでに食べたんじゃないの?」
「だから、食べてないと言っているでしょう!!」
 そこからは、お互い引かずに口喧嘩となり、終いには職員室中の先生が止めに入る位の大喧嘩となった。
 その中で、校長先生が柳先生にボソリと呟いた。
「……いいかな、これが三角諸島問題の大まかな感じだ」
 その手には、真新しいタルトが。
「……なるほど……」
 よく分かった。

       

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