Neetel Inside ニートノベル
表紙

文乃秦短編集
備讃奮闘記

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「…くそ、きりがねぇ!」
「才堂、あまり雑魚を気にするな、体力を消耗するだけだ」
才堂と呼ばれた男の周りにはおびただしいほどの人が狂気な瞳を才堂に向けている。
才堂…文乃島高校定時制の2年生、定時制の中から選ばれた対県教育委員会用戦闘部隊、通称C・E・P・Bの一人だ。
「しょうがねぇ、強行突破しかねぇか」
才堂がそういうと後ろに潜んでいた一人の女性が呪文を唱え、雑魚どもを吹き飛ばしていく。
「強行突破は私の専門分野よ、忘れないでいただきたいわね」
福斗目…C・E・P・Bのメンバー唯一の女性、素行が悪く猪突猛進な性格だが、そのぶん一途な面もあり、才堂とは仲の良い関係である
「福斗目、アリガトよ!おっしゃ、このまま突っ切るぜ!」
才堂が拳で雑魚を牽制しつつ、福斗目が築いた人の橋を渡っていく、その後ろに忍び寄る影
「ぬうおあ!」
振り向いた才堂が見たものは一直線にこちらに向かってくる雑魚をふっ飛ばしている姿だった。
「全く見ちゃおれんな…もう少し周りを見ろ」
八朔…才堂とは良い友人、見た目は200cmを超えるデカイ体だが反面性格はおとなしい、優秀な頭脳を持ち、彼もまた、C・E・P・Bのメンバーである。
対県教育委員会用戦闘部隊、通称C・E・P・B、この部隊は元来教育委員会に蔑まれて来た定時制の特殊攻撃部隊、目的は定時制の存続、および教育委員会への存続の訴え、ならびに定時制の地位の向上が目的である
その特殊部隊は、才堂、福斗目、八朔の3人で構成されており、この3人には定時制全員の命運
がかかっているのだ!

「うおおおおおおおおぉおおぉおおおおおおぉ」
目的地である教育委員会本部に向かいただひたすら突っ切ろうとする、それを追うかのように後ろにはゾンビのように雑魚たちが群がっていた
「才堂、うるさい、もうちょっと静かに特攻しろ!」
一心不乱に敵の包囲網を突破している才堂がぴたりと止まった
「なぁ、そろそろ俺のこと下の名で呼んでくれないか?」
恥ずかしそうに言葉を放った才堂に、きょとんとしたあと徐々に顔が赤くなっている福斗目がそこにいた
「ばっばか!言えるわきゃねーだろ!こんな…こんな大勢の目の前で!…言えるかよ……///」
蒸気が空を舞い、福斗目の顔はなおも赤くなっていく、それを見てニヨニヨと嫌に笑みを浮かべてる才堂、福斗目をいじって楽しんでいるように見える、それを見かねて
「おい、そんなところでラブコメを展開するな、目的どころか敵に後ろから追われてることすら忘れてるのかお前ら」
八朔が釘を刺す、すっかり我に返った才堂と福斗目は黙々と前に進む、しかし、たどり着いた場所は崖の上だった、どうやら敵の術中にはまったようだ、目の前の崖は落ちたら死ぬ程度の能力。
後ろを向くと、群がっていた雑魚共が中央で真っ二つに別れて、体が一回りも二回りも大きい男がのっしのっしと威厳を撒き散らしながら才堂たちに向かっていく
「がっはっは、全く扱いやすい連中よのぅ、こうも簡単にここまで来るんだからな」
髭をたくさん蓄えたその大男は、大きな斧を片手に才堂たちに話しかけてきた、そしてその言葉に反応したのは八朔だった。
「うんざりするほどこいつらがいたのはそのためか」
「おうよ、こいつらはワシの手駒よ、こやつらを操ってココまで来させる、なかなか良い手だろう?」
一番物分りの良い八朔は、今かかってしまった罠に頭を抱えた、
「すごく分かりやすいね、これじゃ罠にはまった僕たちが馬鹿みたいに思われるな」
頭を抱えたまま笑う八朔を見て笑う大男、しかし、馬鹿にするような笑いではなく、単にその言葉に笑ったのだろう。
「がっはっは、心配するな、何事もしんぷるいずざべすと、分かりやすい方が分かり辛いのよ、お前らは馬鹿じゃない、それゆえにこういうことにはまりやすいのだ」
「なるほどね、シンプルイズザベスト…ね、そうだな深く考えるのは良くないことだな、ありがとう、おかげで頭がすっきりした気分だ」
八朔は先ほどまでとは違い、不敵な笑みを浮かべている。
「さてと、どうしたもんかのう、あんたらを懲らしめるのが惜しくなってきたわい」
ココまで何もしゃべっていなかった才堂が手をわきわきと動かしている
「このまま逃がしてくれる…とは行かないんだろ?」
才堂のその言葉に今まで以上に笑いながら大男は喋りだした
「お、どうやらなかなか好戦的なのもおるではないか、前言を撤回しよう、お主と一戦交えさせてくれ、それでお主が勝ったなら通してやろう」
「いいねぇ、一対一か、燃えてきたぜぇ?」
才堂がそこまで話した後、福斗目が会話に入ろうとする
「ねぇ、私も混ぜてよ、面白そうじゃん?」
「断る、これは一対一でやらしてくれ、久々に腕が震えそうだ、俺はこいつと戦いたい!」
福斗目が入ってくるのを拒み、一歩づつ前に出て行く。
今の才堂には、大男以外見えていない、才堂は自分より強そうな相手を見ると腕が震えてしまうのだ、そしてその腕の震えが始まったとき、それは、力のリミッターがはずれ、精神はその相手を倒すことしか考えなくなるときなのである。
「あーあ、また始まっちゃったよ」
そんなことを言い放ち額に手を当て斜め下を向いている福斗目
「これから起こるのは結構見ものだな」
そんなことをいいながら二人の間に目をあわせ、それしか見ていないような感じの八朔

・・・長い沈黙・・・
戦いを挑んだ才堂も、その勝負を受けた大男もまるで動かず、静かに時は流れる、しかしその均衡が破れる。
「ヘックチ」
ガキィン
「へあ・・・?」
福斗目のくしゃみにより金縛りにあっていたかのような二人が金縛りより解かれ、そして牽かれあった、大男は斧を、才堂は左の金でできた腕輪を互いに前に差し出していた。
くしゃみによりその一瞬を見れなかった福斗目は、何が起こったのかわからず腑抜けた声を思わず口に出していた。
「ほう、なかなかやりおるわ、口だけではないということか?」
「おっさんこそ、ふくよかな体つきして良い動きするじゃねぇか、おかげで腕が震えたまんまだぜ?」
互いに力を腕に込め、前に出し互いを押し続ける、互いが一歩も動かないことを見る限り二人の力は互角だ。
もう一度金音がすると、二人は一歩後ろに下がり、そしてまた、前に踏み出す、いつの間にか才堂の右腕には、金属ではない、宝石のように光り輝くグローブが付けられていた。
金属のグローブを付けた左腕で大男の斧を牽制し右の光り輝くグローブで執拗に急所を狙う、その才堂のえげつない攻撃をものともせず、斧で攻撃しその斧で自分を守る大男、戦いは続く…。
「すげぇ、俺には何がなんだかわからねぇ!」
「もう腕が見えねぇwww」
「これは燃えるぜぇ!」
「すごく…戦いです」
「なぁ、横の二人は俺ら、倒さなくていいのか?」
「いいんだよ、親分が倒さなくていいっていってんだから」
「俺きいてねぇよ…」
「今聞いたからいいじゃねーか」
「そうだな、俺らはこの戦いを見守ろう」
「そうだ、それが一番だ」
「あぁああぁぁああぁあ、うっっっっさい!!!!」
大男の子分どもがざわざわとざわついてるのに、怒りがこみ上げてきたのか、福斗目が怒りを声にして放つ、いまだに響く金の音以外を残して沈黙が走る、福斗目は目を才堂たちに向け、真剣な眼差しでそれを見る、沈黙においていかれた子分たちもあわてるように戦いの最中へ目を向ける。
そして・・・長い時は過ぎ、今までのそれとは違う金属のはじける音が響き、そして。
「終わり…だな」
ドスン
上空から落ちてきたのは大きな斧だった、それは、今まで大男が使っていたものと全く同じものである。
その大男は才堂に蹴られ、天を仰いで大の字に寝転んでいた
「ワシの負けか…ふん、良い戦いであったわ」
空の手を天にかざし、ひそやかに微笑む大男、才堂は視線をはずさず、未だに大男を見つめ続けている。
「強かったぜ、あんた…名前は」
「…鷲尾、鷲尾源内(わしおげんない)だ」
「そうか…」
ドスッ
「次会うときはもっと強くなっていろ、まぁ、楽しかったぜ」
才堂の突き出した右手は横たわっている鷲尾の顔のぎりぎり横を貫き、地面が陥没していた。
鷲尾は大笑いしながら思った。
(もう先は長くはないが、この戦士に勝ちたい、才堂に勝った時、それが自分の死ぬ時だ…)と
才堂の目はもう別の方向を見ていた、教育委員会の本部へ向かいながら
「次も負ける気はねぇけどなぁ、今日は久々に緊張感を味わったぜ、じゃあの」
そしてC・E・P・Bの3人は敵の本陣へと駒を進めていくのであった。

       

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