Neetel Inside 文芸新都
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「一枚絵文章化企画」会場
「シャドウハンター」作:顎男

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☆☆☆

『シャドウハンター 作:顎男』

 その街に一歩踏み入れた瞬間から、剣士は激しい違和感に襲われていた。
 秋の収穫祭を終え、冬に向けて皆が家に閉じこもりがちになるとはいえ、人っ子一人歩いていないのはおかしい。
 かといって、兵隊崩れの盗賊団の襲撃があったにしては、街路や建物への破壊の痕跡が無さすぎる。
(……あいつら、また派手にやりやがったな)
 胸へとこみ上げてくる嫌悪感を精神力で必死に押し殺す。
 右の義手を左手で庇うように添えながら、剣士は街の中央へと進んだ。
 途端、待ってましたと言わんばかりに殺気が広場に充満する。
 剣士は素早く目端でそれらを捉えた。
 影。
 そういう他にない。黒く、太陽の光によって伸縮するもの。
 ただ普通のものと違うのは、それらには重みと高さがあり、その口腔から喰らったばかりであろう住人たちの血が涎と共に零れていることだ。
「てめェら……殺しても殺してもキリがねえんだからな、まったく」
 影たちは答えず、老獪に剣士を取り囲む包囲網を少しずつ狭めていく。
 そうして、影たちがここぞとばかりに飛びかかろうとしたその時。
 腰に提げた鞘から、剣士はおのが剣を抜き放った。
 

 この世界でモンスターハンターといえば、害獣を狩ってその肉や毛などを採取、売却する稼業のことを指す。
 剣士がやっていることは、何の利益にもならない。
 神出鬼没な影たちが人を襲うことは止められないし、倒したところで肉も毛も皮も落としてはくれない。
 だが、誰かがやらねばならない。
 見てみぬフリをすれば、またどこかで、失くした腕と家族の復讐に燃えるバカなガキが出てくるだろうから。
 そんなやつをこれ以上、一人だって出させたくない――。


 淡い燐光を放つ剣を、剣士が払って鞘へと仕舞った時。
 広場にはただ、無言の静寂だけが残されていた。
 住民たちの仇は討ったが、それで誰が喜ぶものでもない。
 親族身内は丸ごとやつらの腹の中だ。
 消しても払っても影は湧いてくる。まるで人々の足元に影がある限り、彼らも消えぬというように。
 もし、そうであっても。
 剣士は先刻まで戦場だった場所に背を向ける。
 ――太陽のように、やつらを消し続けるだけだ。

 ★★★

       

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