Neetel Inside 文芸新都
表紙

平和な俺に突如ふりかけがふりかかる!
ありきたりな

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男は恋をしている。
しかし、顔も名前も性格も、何一つ知らない。もしかしたら男かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
あった事も話したことも無い。もちろんネットで接触した事もない。
でもその気持ちは本物であったし、自身、恋をしているという自覚があった。
けれど、相手は形も何も、存在しているのかすらわからない。
いつも抱きしめたい、手をつなぎたい、そして口付けたい。セックスもしたい。
そういうまっとうな恋愛感情は存在しているのに、相手のことが全くわからないのだ。
わかるのは恋をしているという事だけ。

     


     

この感情を抱いたのはいつからだろう。
気づいたら好きになっていた。
夢にもたまに出てきた。
けれど顔形や体型は全く思い出せない。ただ人であったということは確かだ。
叶わぬ恋ほど燃えるという。
その法則は男にも当てはまった。
男はいつでもその人のことを考えていた。考えていないときなどなかった。

     


     

男は次第に、会いたくてたまらなくなった。
じっとしているのが耐えられずに、彼女(彼)を捜しに出かけた。
しかし見つからない。
帰ってから何も手につかない彼は、会社から解雇された。
それ以前から成績は目に見えて落ちていたし、当然のことだった。
男は貯金がなくなって生活ができなくなるまで捜した。
ついに貯金が底をついて何も食べられない日が続くと、見つからない恋人は幻覚となって現れた。
やっぱり姿かたちはわからない。
しかし微笑んでいた。それはわかった。
でも幸せだった。目の前にいるのは幻覚だと理解する余力はなかった、ただ幸せだった。
男は死んだ。

       

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俺と…お前だ! 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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