Neetel Inside 文芸新都
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平和な俺に突如ふりかけがふりかかる!
ありがちノベル

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最近俺の家に泥的が入り込んでいるような気がする。
といっても金が無くなるとか、貴金属がなくなるとか(まあ、そんな高級品はこの家に無いのだが。)そういうもんじゃない。
食い物が無くなる。
トイレットペーパーの空きが早い。シャンプーだとか、洗面用具も以前より早く減る。
いつの間にか使った覚えがないコップが置いてある。
それから、俺は戸締りをきちんとするタイプなのだが、きちんと閉めて出かけても帰ると窓の鍵があいていたりする。
これは怪しい!
かといってこれといった被害もないし、男一人暮らしの部屋に入り込みたがるような物好きはそうそういないだろう。
俺は彼女いない暦=年齢という実績を持ち合わせているプロの毒男だから、俺の追っかけがいるなんて訳も無いのだ。   ……('A`)

さて、俺がやつの存在を意識し始めてから約2週間後。
俺はなんだか部屋の隅に違和感を覚えた。
部屋の隅にあったのは鏡だった。鏡に映るのは俺、そして俺の背後に少年。
アワワワワワワ!
でもいるべき場所を振り返っても誰もいない。
ゆ、幽霊か?それにしてははっきり映ってるな…って、何冷静に観察してるんだ俺!
これは只事ではないと馬鹿な俺でもわかるだぜ?
「お、お前誰だゃ!」
動揺して語尾がおかしい。
俺の背後から返事が返ってくる。
「みつかっちゃたぁ」
…モエス。ちげえ、俺はショタコンじゃねえ。

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少年は大体6,7歳でショタコンにはウハウハなかわいい男の子だった。
目が大きくてTシャツ、短パンといういかにもな出で立ち。
そして鏡を通してしか見ることはできない。
でも見えないだけで存在はしていて、本人曰く「ドラキュラの逆」。ドラキュラは鏡に映らないという話のことだろう。どこでそんな知識を手に入れたのだろうか。
鏡を通してしか確認できないので今まで誰にも見つけてもらえず、いろいろな家を転々として食べ物などを調達していたらしい。一人暮らしの俺の家は仕事にいっている間自由に使えるので結構な期間居候していたとのこと。全く人騒がせなやつだ。
そして今日、初めて俺に発見させられたということらしい。
俺は小さい頃から小動物のように周りの気配に敏感だった。そんなのが今こんな形で発揮されるとは正直思わなかった。
「で、お前これからどうするの?」
「うーん、どうするんだろうねぇ。」
「どうするんだろうねぇ、って、またすぐ次の家とか探せるのか?」
「結構大変だよ?まず都合いい家かどうかを調べなきゃいけないし、そこに忍び込むのだって、タイミング見計らってやぁっ!って行かなきゃいけないから怖いんだよー。ぼく見えないけどすり抜けたりはできないもん。」
「ふぅん、大変だなあ。」
「だから・・・、そのぉ・・・、ぼくここにしばらくいちゃダメかな?」
そして、俺はこの子をしばらく養うことになってしまった。

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俺は正直子どもが嫌いだった。
全く子どもっていうのはギャーピー騒いでうるさいったらありゃしねぇ。
その点こいつはいつも息を潜めて生活していた癖がついているのか、かなり静かだった。
話しかけると上機嫌で話しだすが、話し掛けない限りはいるのかいないのかわからないときもある。
飯の時は鏡を置いて話しながら食うようにした。
なんとなく、誰かと食べる時は楽しく話しながら食べたいっていう俺の趣向だ。
やつはいつも手づかみで物を食べていたようで、箸が使えない。
俺は居候させている間に、箸の使い方をマスターさせてやろうとひそかにもくろんでいる。
「お前、生まれた時からそんなだったの?」
「ううん、違うよ。生まれたとき見えなかったらおっぱいも飲ませてもらえないよ。」
「そ、そうだなあ。じゃあいつから見えなくなったんだ?」
やつは首を横に振った。わからないらしい。
「母親の顔とか、覚えてないの?」
「ちょっとしか。」
「そうか・・・。なんで家出てきたの?」
「おうちの中、ぼくが死んだことになっててすごく暗かったの。だから。」
こいつほんとに幽霊だったりして。

     

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奇妙な少年と同居して1ヶ月。
俺は最近異変を見つけた。
少年が見える場所が増えてきたのだ。
つまり、周りが鏡化してきた。最初は、テーブルみたいな無生物から、きらっと光る部分がぽつぽつ出てきた。
それはどんどん広がってきて、最近では植物すら鏡化してしまった。
やつの影響かもしれない。
あいつは日増しに見える場所が増えて少し戸惑っているが時折嬉しそうな顔をするのを俺は見逃さなかった。
まあそんなことはどうでもいいんだ。
起こってしまった事はもう直しようがないし、適応不可能な代物でもない。
最初の頃はみんな酔って大変だったが。
周りの半分以上が鏡になった頃はそれは大変だった。だんだんどれが本物だかわからなくなる。
周り4面に俺が映ってしかもそれが無限鏡のようになっていれば酔うどころか気もくるいそうだ。唯一救いだったのはそれが非常にゆっくりとしたペースで進んだことで1日でその日の変化分は慣れることができた。

「まいったな・・・」
水まで鏡になっちまった。
見た目水銀だ。ただ比重その他もろもろは水と全く代わりない。
料理には少し不便だ。火が通っているのか確認が難しい。これは慣れるまでにかなり時間がかかった。
「どうしたの?」
もうわざわざ鏡をもって来る事などしなくても確認できるようになった。
「ん、水まで鏡みたいになっちまったんだ。」
そう言って俺は鏡みたいなタオルで手を拭く。
「…ぼくのせいかな?」
「・・・そうかもしれないな。」
「ごめんね」
「でも、そうじゃないかもしれない。それはわからないしもしそうだとしてもお前は悪くないよ。たぶんな。それに、この生活だって慣れれば平気だ。」
「ごめん…。」
俺は正直どういっていいのかわからない。
責めるわけにもいかないし、かといってこの原因がこいつだとしたら、さらにはそれを望んでそうしたのであったらと思うと弁護する事もできない。
何しろこいつは普通じゃないから、こんなことが起こっても不思議じゃない。
「ぼくね、今すごく楽なんだ。」
「そうか。」
「うん。ずっと一緒にいられる感じがしてすごく楽しい。」

     


       

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