四の四

 響は大阪へ向かう新幹線の中で棋譜を眺めている。
 土曜日の三段リーグ戦、慈乃は宣言通りに圧勝した。周囲には静かな立ち上がりと見えていた序盤も最後まで見てみれば詰みに向けた一直線の道を作り上げており、それを相手が悟る頃には全てが終わっていた。或いは慈乃には、対局が始まる前から、駒に触れる前から、全てが映像として鮮明に見えていたのではないかと疑われるほどの棋譜だった。
 美しいと思う。大友三段への非礼と承知していても、相手が自分であればもっと素晴らしいものができたのにと、その考えを止めることができない。
 全てを見通したような透明な棋譜は、これ一枚に万物の真理が記されているのではないかと考えたくなるような、間違いなく天才のものだ。
 見惚れているうちに新大阪に到着、眺めていた棋譜を鞄にしまう僅か一時の間にも切なさを感じながら、響は席を立った。