『五分ほどの短い間で、浅井は7六歩と突いた。これは控え室の検討で王手飛車が見えていた一直線の流れに乗る。
「どうも、この調子やと読み切った上での5七桂か。詰むや詰まざるや、二の太刀要らずの間合いやな」
 千代五段と大盤に向かう小寺二冠からは普段のおちゃらけた空気がすっかり消えている。
「控え室の検討では一直線の流れでしたから……最後の局面になった時に、5七桂がどう生きてくるのか。ちょっとまだ、検討では見えていないんですけど」
 歯切れの悪さからして、千代五段は後手の詰みがないと見ているのだろうか。
 詰めば後手、詰まなければ先手。小寺二冠の言う通り、両者共に二の太刀の無い必殺の間合いに入った。果たして首が飛ぶのはどちらの玉か。
 残り時間は両者三十分を切り、決着は間近に迫っている。(続く)』


 ――先5四銀、後同玉、先5五歩、後同銀――