目の前のモニターを横切っていくコメントの群れを眺めていると、銀乃介はどうにも肩の力が抜けていく思いだった。双方向メディア、即ち、出演者と視聴者がお互いにコミュニケーションを図りながら番組を作り上げていく、というのがこの企業のウリらしいが、流れていくコメントの九割方は将棋の内容と全く関係がないものが占めているのである。居酒屋で友人相手に雑談している、そんな空気と錯覚してしまうのも仕方ない。
「横歩ですね」
 ――先2四歩、後同歩、先同飛、後8六歩、先同歩、後同飛――