先手が飛車の位置を戻す手に対しては玉を固める4一玉。このまま6二銀、5一金としてしまえば、玉の堅さでまず一つ、先手に勝る事が出来る。
 横歩取りのようなすぐに戦いが起こる戦型においては、『手数のかかる絶対的な堅さ』ではなく、『相手よりも相対的に堅い陣』を『可能な限り少ない手数で』整えることが重要になる。その点、陣を低く構え、金駒の連結を最低限に抑えたこの形は非常に相性が良い。絶対的な堅さの代表である穴熊が堅さと深さで勝負する形ならば、こちらの囲いは速効性と陣の広さが最大の長所。難攻不落の山城ではなく、あくまでも野戦陣地のようなものと考えればよい。終盤になれば陣が崩されることを織り込んだ上で、捕まらないように逃げ回る広さを、左右両翼に確保しているのだ。
 陣を整えた後は飛・角・桂と言った足の速い駒を動員して速攻を目指す。そしてその時にこそ、8五飛型の利点の一つである、攻めの鋭さが発揮される。
 『横歩取り』という戦型において、後手は歩を失った3筋に対する攻めを飛車の横利きでカバーする必要があるのだが、その為、8四飛型の場合などは、右桂を活用するキモとなる7四歩の突き出しに制限がかかる。しかし8五飛型であれば、3筋を五段目で受けることで、序盤での7四歩の突き出しが可能となり、攻めの速効性が引き上げられるという訳だ。
 ――先4八銀――