指してから、声をかける。
「体調は、大丈夫ですか?」
「死にゃあしねえよ……俺は十兵衛ほど将棋の神さんに好かれてねえからな」
 響が言葉の意図をつかみかねていると、
「盤前で死ぬなんて幸せは、俺にはくれねえってことさ」
「そうですか」
「このジジイの事を思ってくれるなら、そんな下らん気遣いよりも、今、この将棋を思い切り指してくれや……楽しいんだよ、久々に」
 ――先5六玉、後5五歩、先同玉、後8六馬――