日付が変わろうかという頃になってなお人が散ることは無かった、それどころか聴衆は時間を増すにつれて増えてきている。正月気分もあるが、将棋の内容が帰ることを許してはくれなかった。
 佐々木の指した7六歩が伝わると、勘太は好機だと漏らした。
「名人の失着だってのかい?」
「失着と言える程かは解らない。だが、先手としては5三の地点に効きを増やしたいのだから、この桂を跳ねるのはむしろ望む所。後手はそれを手伝った形になる」
 ―― 先6五桂、後6四銀、先5三銀、後同金右、先同歩成、後同銀左、先同桂成、後同銀、先6三角成 ――