Neetel Inside 文芸新都
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あなかむじ
セルモーター

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 「パイロンにもっと寄せろ、ブレーキが甘い、ってかそもそもアクセル踏めてないだろ、アクセル踏もうとおもうな。床を踏み抜くつもりで行け!!」

 サーキットのパドックで怒号が飛んでくる。自動車部の先輩からキツイ指導を受ける。
乗り始めでこんなところ連れてこられて、いきなりタイム出せってそりゃ無茶だよ。
早速EGに乗り始めハッピーカーライフを期待していた身としては、

正直嫌になる。

でも、

どんなに嫌になってもこの部をやめられない理由が僕にはある。
 さっきから怒号を浴びせてくるこの鬼教官こそ、高校時代に僕を振った先輩だからだ。


春、大学に入り、授業になれてきて、体育館で催されていた新歓大会にてヲタサークルを物色していた僕は、

「トンダ?」

という声に振り向いてしまった。そこに居たのは、あの生物部の先輩、山野さんだった。

生物系が好きだった先輩はそのまま理学部に進学していた。先輩が居たから、あえて地元ではなく、この大学に入ったというのは無くは無い。もちろん先生からは、進路理由を問いただされたりしたが、親が放任主義だったので先生も諦めて、行くなら行けよという感じで来てしまった。

まあ、ともかくキャンパスで会えたら、というかすかな希望を広大な敷地を前に早々に諦めていた僕には、声を掛けてもらえただけで、僥倖といったところだった。但し、こんなヲタサークルの机の前でなければもう少し恥ずかしい思いはしなくて済んだのだが。

「お久しぶりです」
「へえ、ヲタクだったんだ」
「あ゙ぁ、ハイ(知られたくなかったぁ)」
「私もヲタクなんだ」
「へっ?(嘘だっ!!)」

       

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