Neetel Inside 文芸新都
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あなかむじ
イグニッションコイル

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 「タイヤはAD07、足はオーリンズ ストリート、その他どノーマルEG、3万」
これが僕と相棒の最初の出会いだった。
 「買います」
こうして、僕は国産中古ボロ車に乗り始めることになった色は黄色のハッチバック。ドアに擦り傷、バンパーにはワレ有り。普通に中古車屋さんに持ち込めばゴミ扱いされかねないが、僕はこういう車が欲しかった。別に傷もワレも欲しくないけど、そのおかげでお金が節約できるならそれでいい。車に乗りたい、速い車に、それだけ・・・。

最初のきっかけは何だったんだろう?

あまり思い出したくもない苦い思い出がそれに当たるかもしれない。高校2年の秋、僕は・・・。それも見事に。生物部の先輩に恋をして、その思いを伝えようとして。

普段あまり、通らない3年生の教室の前の廊下で、先輩を呼び止めて

「あの、お話があるんですけど。今日放課g」
「告白なら断るわ」
「・・・」

伝える前に断られたってかフラれた。後輩のガキに興味無いのは分かるけど、あの場所じゃなくても良いじゃん。呼び出した先でも良いじゃん。

言葉にならない抗議の言葉は口から先には出なかった。

顔面真っ赤にしたガキは、その後のことが殆ど記憶に無い。再び記憶に刻まれているのは、深夜のF1中継だった。
そのころ、深夜のアニメを見る口実にF1を何とはなしに見ていた。今思えば隠す必要もないのだけれど、多分バレてたと思うけど、重度のアニヲタだった僕は、親にはそれを隠していたかった。
F1は好きだけど、別にスタート直後の1コーナークラッシュを見てしまえば、あとはクルクルサーキット回るだけだしと思ってた。
でも、その日は違った。空っぽになった心に、F1カーのエキゾーストノートが何故か響いた。そして心の底がドクンと鳴った。

       

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