これはとある進学校でのお話です。
特に特殊能力を持った方々などはでてこないほのぼの学園コメディです。
それではお楽しみください。
「東丘高校から引っ越してきた。黒澤 雅です。 よろしくおねがいします。」
ふわっと下げた頭はどこかかったるそうな感じだった。
むっと思って顔を覗こうとしたが残念なことに見えない。
やっぱ視力落ちてるな俺、コンタクト忘れるともう致命傷のようだ。
自分のさらなる視力低下にちょっぴりセンチメンタルになってしまった時。
「席はあそこだな。」と先生が指差した。
おっと、どうやら焦る必要は無いらしい。その席は俺の隣じゃないか。
真っ黒でつやつやとしたストレートの髪が歩調に合わせて揺れている姿。
好きだ。まぁ、好きだ。好きか嫌いかで言ったら完全に好きな部類に入る姿だ。
隣にふわりと座った子はとっても可愛らしかった。
なにが可愛らしいかって、髪は説明済み。
目はくりくりとしていてちょっと釣っている。だがそれがいい。
ちいさくちょんとした鼻のしたには、キレイな色したピンクの唇。
っと、こんな説明口調になっている場合ではない。声をかけなければ。
「はじめまして。檜山 勇です。よろしく。」
どうだ。このさらりとした感じ。と相手のレスポンスに期待したが。
「あぁ、よろしくおねがいします。」
とまあ、あっさりとしたものだった。
成績優秀、スポーツ万能かつクールな俺。（いやマジで。そういうキャラなんだよクラスだと。）
がこんなにもあっさりスルーされるなんて。
そうだ、そういえば彼女は転校生じゃないか。事情を知らないんだ。
そう思って自分の気を落ち着かせながら、ちらり彼女のカバンの中を見ると、
ZIPPOのライターが入っていた。
あれ、おかしいぞ。ZIPPOじゃないか。ライターじゃないか。
ライターの用途は煙草への着火。煙草への着火＝喫煙。
未成年の喫煙はこの国では認められていないはずなんだが。どういったわけなんだろう。
俺は思い切って聞いてしまった。
「そのZIPPOカッコイイね。き、喫煙とかしちゃう感じですか。」
動揺を隠し切れていなかったようだ。だってここ進学校だよ。
喫煙を吃音しちゃったし。って、おもしろくないか。
「・・・あんたはどうなの」
彼女は質問には答えず、なぜか聞き返してきた。
ちょっと驚いて赤面してるのが可愛いかったのでかっこつけてやろうと、
「まぁ、たまに。マルボロを」
と答えてやった。どうだ、すげーだろ。進学校の生徒なのに喫煙してるんだぜ。
といわんばかりに自信満々に答えてやった。
それを聞いた黒澤はちょっとびっくりした顔をして
「私は吸ったことないわ、あんなの」
ときっぱり答えた。ってあれ？
チューニング
まとめて読む
「吸わないのかよっ！」
と小声で突っ込んでみた。後で考えたらおかしなツッコミだった。
「そうよ。わるい。持ってるだけよ。なによ、煙草すってるだけで不良ぶってかっこつけてるつもり？」
よく分からないけれどものすごくお怒りでいらっしゃるようだ。
調子こいて嘘ついた罰だろうか。ここで機嫌を損ねるのも難だし、仕方ない。あやまろう。
「すまん。そんなつもりはない。」
とこちらが謝ってるというのに黒澤は教科書を出して次の授業の準備をしていた。
なかなかふてぶてしい奴だと思った。
三時間目は古典。
この教科はなかなか手ごわい睡魔を派遣してくれる。
ちなみに黒澤とはホームルームから話していない。
いつもなら図説資料でも読んで暇をつぶすのだが、最近はほとんど読みきってしまったので暇だ。
ちらっと黒澤を見ると、黒澤も暇なのかノートの端に落書きをしてる。
『なぜこのような箱に閉じ込められ、なぜ私は学ぶのだろう。
昔の言葉。時は進み続けているというのに。
わからない。この社会が分からない。・・・
なんと落書きかと思ったそれは、ステキなポエムだった。
だめだだめだ。笑ってはいけない。今は授業中だ。みんなの邪魔をするわけにはいかない。
ここはひっそりと一人静かに楽しもうではないか。当の本人は黙々と書き続けているみたいだし。
・・・憂うつ。なんだろうこの気持ち。これは虚無なのか。
早く闇夜の世界と変われ。そのときこそが私の活動時間。』
さらさらとシャープペンシルを走らせるそのかわいい腕。
「うつ」という所を漢字で書こうとしたのだろう。何回か消しゴムで消した後がある。
結局自信が無かったのか妥協してひらがなにしてある所もちょっとかわいい。
ぴたりとペン止まると、黒澤の表情に満足の色が浮かんでいた。
そして俺も満足だ。なにせこんなステキなポエムの製作場面に立ち会えたのだから。
ふと不意に黒澤きょろきょろ辺りを見回した。
そして、目が合った。どうしよう。
「・・・あんた、まさか読んでた？」
小さな声と硬い表情ををふるわせて聞いてきた。
これは困った。なんと返答したら良かったのだろうか。
俺が出した答えがこれだった。
「うん。なんだ。早く夜になると良いな！」
黒澤は顔を真っ赤にして目をうるうるさせると、机に伏せてしまった。
どうやらこの返答は失敗だったようだ。
と小声で突っ込んでみた。後で考えたらおかしなツッコミだった。
「そうよ。わるい。持ってるだけよ。なによ、煙草すってるだけで不良ぶってかっこつけてるつもり？」
よく分からないけれどものすごくお怒りでいらっしゃるようだ。
調子こいて嘘ついた罰だろうか。ここで機嫌を損ねるのも難だし、仕方ない。あやまろう。
「すまん。そんなつもりはない。」
とこちらが謝ってるというのに黒澤は教科書を出して次の授業の準備をしていた。
なかなかふてぶてしい奴だと思った。
三時間目は古典。
この教科はなかなか手ごわい睡魔を派遣してくれる。
ちなみに黒澤とはホームルームから話していない。
いつもなら図説資料でも読んで暇をつぶすのだが、最近はほとんど読みきってしまったので暇だ。
ちらっと黒澤を見ると、黒澤も暇なのかノートの端に落書きをしてる。
『なぜこのような箱に閉じ込められ、なぜ私は学ぶのだろう。
昔の言葉。時は進み続けているというのに。
わからない。この社会が分からない。・・・
なんと落書きかと思ったそれは、ステキなポエムだった。
だめだだめだ。笑ってはいけない。今は授業中だ。みんなの邪魔をするわけにはいかない。
ここはひっそりと一人静かに楽しもうではないか。当の本人は黙々と書き続けているみたいだし。
・・・憂うつ。なんだろうこの気持ち。これは虚無なのか。
早く闇夜の世界と変われ。そのときこそが私の活動時間。』
さらさらとシャープペンシルを走らせるそのかわいい腕。
「うつ」という所を漢字で書こうとしたのだろう。何回か消しゴムで消した後がある。
結局自信が無かったのか妥協してひらがなにしてある所もちょっとかわいい。
ぴたりとペン止まると、黒澤の表情に満足の色が浮かんでいた。
そして俺も満足だ。なにせこんなステキなポエムの製作場面に立ち会えたのだから。
ふと不意に黒澤きょろきょろ辺りを見回した。
そして、目が合った。どうしよう。
「・・・あんた、まさか読んでた？」
小さな声と硬い表情ををふるわせて聞いてきた。
これは困った。なんと返答したら良かったのだろうか。
俺が出した答えがこれだった。
「うん。なんだ。早く夜になると良いな！」
黒澤は顔を真っ赤にして目をうるうるさせると、机に伏せてしまった。
どうやらこの返答は失敗だったようだ。
