Neetel Inside ニートノベル
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02 美少女警察

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 昨晩の混乱の覚めぬ頭を抱えてコンビニへ入店し、昼食のパンを選び始めてから15分。
俺はようやく選び抜いたパンを手に取り、レジへ向かった。
少々混乱しているとはいえたかがパン一個にこれほどの時間を浪費するとは。
昨日の漢字検定のテキスト選びといい、俺はつくづく優柔不断な奴だと思った。
しかし、分かってはいてもこの優柔不断な性格が治る事は無く、まだしばらくはこのままだろう。
そう考えつつ、俺はコンビニを出た。
 昨晩の奇妙な出来事のあった、通りに出た。
その通りは、本当にあの出来事があったとは思えないごく普通の道路だ。
しばらく歩くと学校のまだ造り直されたばかりで新しい校門が見えた。
校門を抜けると、本日入学式を迎える新入生たちが体育館の前に集められて、全員固い表情をしていた。
これからの生活以外にも交友関係や上下関係などの不安があるのだろうが、俺には理解できない。
孤独主義の人間には当然か。

 3限目までの授業時間を使って、体育館にて新入生の入学式は行われた。
俺達のクラスは4限目に体育が入っていて、不運にも入学式の片付けをすることになった。
ほとんどの作業が済み、終業の5分前に解散となった。
「3年4組」の教室に戻る途中、「3年2組」の教室の外に何やら男子の集団が出来ていた。
「例の編入生だよ、みんな興味があるらしい」
俺が不審げに見ていると隣にいた、長野が言った。
「へえ、だからって何であんなに」
「それがまた随分と美人らしい、確認はしてないが」
「単純なんだな…」
そういいつつも、
俺は男子の集団が小さくなるのを見計らい、確認することにした。
 教室を見渡した。授業は世界史で、全員ノートをまとめていて、顔を確認しづらい。
俺も諦めて教室へ戻ろうと思った、その時、
校庭側の窓際に座る一人の女子生徒が目に入り、俺は驚愕した。
 そしてつい、あっと声が出た。
「あんた、昨日の…」
授業中にも関わらず、俺は教室に一歩足を踏み出し、その女子生徒を指差しながら大声で言った。
教師も含めクラス全員が口をポカンと開け、俺を見つめていた。
だが、俺が指さしている女子生徒は、なんと昨晩の謎の美少女に違いなかったのだ。
しかし謎の美少女をこの学校で見たのは初めてだった。

 教室がざわめき出して、やっと我に返った。
その時、
「先生、4組の岡山くんの様子がおかしいです!」
謎の美少女が言った。
「そうだな、保険室に連れていってやりなさい」
「私は保険委員ではありません」
「じゃあ、保険委員」
「4組の生徒は対象外です。」
この冷静なやり取りに教室が沸いた。

 俺はこの場を逃げるように立ち去った。
昨晩のあの出来事による混乱からようやく落ち着いてきた俺の頭が再び、混乱を覚えた。
彼女は一体何者なのだろうか、

 結局この日俺の頭から謎の女子生徒の姿が抜ける事もなく授業もほとんど頭に入らずに
すっきりとしないまま校舎を跡にすることになった。
このままではマズイ、何も手につかない。
ますます重くなる頭を抱えた。
そして思わず溜息を吐いた。

「どうしたの?大きい溜息ね」
突然背後から声がした。
俺は慌てて振り返りつつ、2、3歩後ずさりをした。
そこにはあの謎の女子生徒の姿があった。俺は驚きのあまり絶句してしまった。
俺が彼女を凝視している間、彼女はずっと首をかしげていた。
「あ、あんた何しに来たんだ?」
やっと出た言葉がそれだった。
「ちょっと、助けてあげたのにそれはないんじゃない?お礼ぐらい言いなさいよ」
彼女は張りのある声で言った。
「それは…、ありがとう。だけど一体あんたはなんなんだ?ほんと訳がわからないんだよ」
「…それもそうね、さっきはごめんなさい。でもああするしかなかったの、昨日の事がばれたらいろいろ困るから」
何が困るのか、しかし彼女のあやふやな言い方からそこは秘密なのだろうか。
「…君は何者なんだ?」
「ただの編入生よ」
「おい、」
つい冷めた口調になってしまった。
「冗談よ、私は警察なの」
彼女はそんなことを恥ずかしげもなく言ってしまった。
「はあ?警察官、って高校生でなれるものじゃないだろ?」
今度はつい過剰なリアクションを取ってしまった。
「大丈夫よ、少年犯罪対策の特命係だから」
「そういう問題じゃ、ていうか意味分からないし」

 結局俺がいろんな切り口で質問してもこれ以上彼女は何も教えてくれなかった。彼女の言っていることはとても信じられなかったが、
なんとか納得しているのか、頭の混乱はだいぶ治まったように思える。
「じゃあ最後に、本当に警察?」
「本当よ、」
そういって彼女は何かを差し出した。
それは刑事ドラマでよく見かける警察手帳だった。警察手帳に詳しいはずないが、何故か偽物には見えなかった。
「…分かった、一応し信じるよ。しかし、特命係なんて本当にあるんだな」
「あるわよ、右京さん程、知的でなければ、只野さん程、強くもないけどね」
「そうなのか、じゃあもしかして編入してきたのも、仕事の都合?」
「そう、仕事の都合よ、少年犯罪の増えている地域をこっそりと取り締まるの」
「へえ、でもそんな事、俺に教えていいのかよ」
「ダメよ、言ったでしょ。ばれたらいろいろ困るって」
「え…じゃあなんで?」
「なに言ってるのよ。あなたが教えてって言ったんじゃない。とにかく絶対に人に教えちゃだめよ」
「それはそうだけど、…いやその通りだ。」
すると彼女はニヤリと笑った。
いろいろと反抗したかったが、徒労に終わるだろう。
今はただひたすらこれ以上面倒なことにならないよう祈った。
「さ、帰りましょう」
どうやら一緒に帰るらしい。

 これが俺と彼女、宮崎千歳との奇妙な関係の始まりだった。

       

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