Neetel Inside 文芸新都
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白い森のヨナス
ハクトウワシ(再録)

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 かわいそうに、スモモの実は、すっかり脅えていました。無理もありません。大きなハクトウワシに食べられそうになっているのですからね。スモモは必死で訴えました。

 「ワシさん、ワシさん、大きなワシさん、どうか僕を食べないで下さい」

 「そうはいかない。俺は腹が減っているんだ」

 「でしたら、この近くに沢山魚の住んでいる大きな川がありますよ。魚の方が、僕よりずっと美味しいですよ」

 「なに、魚が旨いことは、俺が一番よく知っている。何故なら、他の鳥たちに魚の獲り方を教えてやったのは、この俺だからだ」

 ワシは胸を張りました。

 「お陰で俺は、大忙しさ。みんな、俺から魚の獲り方を教わるのを待っているんだ。――この大きなかぎづめで魚を捕まえるところを、お前にもみせてやりたいなあ。一撃で、獲物を仕留めるところをさ。最初に魚の獲り方を教えてやったのは、ハゴロモヅルだったな。あいつには、今でも随分と親切にしてやっているんだ。俺の巣に一緒に住まわせてやっているくらいにね。その次が、小さなキジさ。こいつは素直でね、俺の言うことなら何でも聞くんだ。まったく、気のいい奴だよ。もうちょっと強ければ、俺と対等に話が出来るんだがなあ。だけど、イワシャコめ、あいつは俺の親切を仇で返しやがった。だから俺は腹いせに、しばらく魚を獲らないつもりなのさ」

 ワシは翼をぱたぱたさせて、スモモの実に言いました。

 「だが、お前にも魚の獲り方を知る権利はある。親切な俺は、お前を食べるのをやめて、代わりに魚の取り方を教えてやることにしよう」

 そしてスモモは、ワシから魚の獲り方を教わることになりました。

 ところで、皆さんは知っていますか?ハゴロモヅルも、キジも、イワシャコも、魚なんて食べません。彼らが好きなのは、木の実や昆虫なのです。スモモは、言うまでもありませんね。私は魚を食べるスモモの実なんて、見たこともなければ聞いたこともありません。





 ※このお話は、あくまでも単なる風刺です。作者はワシにもスモモにも肩入れをしているわけではありません。何故って、ワシもスモモも全くの別物だからです。

       

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