Neetel Inside 文芸新都
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きみみしか
第十五話 驚愕

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 今、僕は源田さんの家を必死に捜索している。何故か。それは叔父がとんでもない説を唱え始めたからだ。
 叔父曰く源田さんの祖父が手記の続きを残しているかもしれないというのだ。僕はその説に驚かなかった。何故なら何を言っているのか理解できなかったからだ。
 僕のそんな様子を見て叔父は自信満々に説明を始めた。
「ちっとも言っている事が分からないようだな。まあ俺もこのことにたどりつくまでには相当な思考をしたからしょうがないか……」
 困惑しながら答える。
「そりゃそうだよ。なんでそんな風に思うの」
「よく考えてみろ。これは当然の事なんだよ。あのじいさんが自分がキチガイの息子であると知ったのは手記を書き終わった後だ」
「どういうこと。やっぱりあのおじいさんはキチガイの息子だったの」
「そうじゃなきゃ時間軸の大幅なずれはどうやって説明する。十年の差は記憶違いというレベルではないだろう。それに他の謎もこれによってすっきりと解決するんだ。例えば何故きみみしかという言葉を聞いて彼は倒れたか。という謎もこれによって解決できる。病院で行われていた治療法は一種の洗脳療法だろう」
 僕は頷く。
「そしてその洗脳を解く言葉がきみみしかだったんだ。だから彼は倒れた。あまりの驚きに倒れてしまった。その後の彼の自殺も自分が殺人者で狂人の息子だったと知ったからだ。十年の差は彼がキチガイの息子だと分からないように洗脳したからだ。記憶の操作もやれるんだからな。どうだ全てがうまくいくだろう」
 僕は反論しようとした。が、確かに叔父の言う通りだという事に気づく。が、まだ信じきっていない。
「そして彼は自殺の前に手記の続きを書いた。そうじゃなかったらずっと嘘を書いていたという事になる。自殺する前にだぞ。何でそんなことをしなきゃいけない。どうせ死ぬんだぞ。最後には真実を書くだろ」
 僕は頷く。確かにそうだ。
「じゃあ、なぜ別にする必要があるの」
 僕の質問に叔父は即答した。
「それはやはり恥ずかしい部分があったんだろうな。それにこれは子供達にも関係がある事だ。自分の祖先が殺人者で狂人というのは知らせたくなかったんだろう。まあこれは推測で、書いていないという可能性もあるがな。が、彼は物書きとして最後に真実を書いたというのは十分あり得るじゃないか」
 僕はうなった。なるほど。
 僕らはすぐに源田さん宅に向かった。そして源田さんに事情を説明する。彼も僕とほぼ同じ反応をした。
 
 が、半信半疑ながら僕たちは一応手記の続きを探している。叔父の言う説が本当ならば確かにそんなものがあってもおかしくはないと思ったからだ。
 が、一時間近く続けても未だに見つからない。僕たちは休憩を取る事にした。
 源田さんはあきらめた様子でこう呟いた。
「家の中のありとあらゆる場所を探した。しかし、どこにもない。やっぱりないのか」
 それに対して僕は冗談でこう言う。
「埋蔵金みたいに地面に埋めてあるんじゃないんですかね。ひょっとして」
 源田さんは笑ったが叔父は笑わなかった。うけなかったのではなく、本気でその可能性を考え始めたのだ。叔父は庭に出た。僕たちも慌ててそれについていく。叔父は源田さんにスコップがある場所を聞き、その場所へ行きそれを手に取った。叔父はめぼしい場所を掘り始めた。なんらかの目印になるものがある場所のある周辺だ。例えば大きな石の周りや玄関のすぐ側だ。が、その二つは外れだった。
 
 叔父はあきらめずに三度目の挑戦をした。探す場所は赤い花を咲かせている木の周辺だ。一心不乱に掘り続ける。彼の体から汗が吹き出るのが分かった。やがて鈍い音がした。固いものとぶつかった音だ。
「当たりか。それとも石か」
 と彼は言いながらスコップを使いそのものの周りを掘り進める。そして叔父が取り出したそのものとは……。

 それは金属製の缶だった。叔父は勝ち誇るように言った。
「当たりの方だな。この中に源田さんの手記の続きがあるに違いない」
 そして缶を開く。僕らが覗くとそこにはノートの切れ端があった。叔父が笑いながら言う。
「よし、真実がここにある」
 僕たちは驚愕することになる。その内容に。

       

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