Neetel Inside 文芸新都
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10.本郷計画始動!

次の日、明は真砂坂上にあるトーア文京マンションの3階に借りた一室にいた。
明となじみの町内会長の井上さんが貸してくれたのだ。
文京区役所が焼けたのをいいことに、ここを「文京区役所真砂坂上臨時分室」と称し
明の作戦本部にしたのだ。

明が始めたことは「2ちゃんねる」に「幸せの輪」のスレを立てることだった。
スレを立てる明は偽名で「幸せの輪」についての書き込みを誘った。
「種村君、それで何か情報が集まるのかね?」
「不満を持っている連中が書き込んでくれれば、なあに、早くて2週間かそれ以降に
制限数である1000個の書き込みがあるでしょう。
まさかそれ以前に1000も書き込みがあるわけが・・・。まあ大船に乗った気でいてください」
すると明の携帯に電話がかかってきた。
「陽二か?」
「明!今すぐ2ちゃんねるのスレを見ろ!大変なことになっているぞ!」
めんどくさそうにパソコンに向かう明は眼を疑った。まだ開設して10分もたっていないというのに
2チャンネルのスレが150を超えていたのだ。
「種村君、これは…」
「井上さん、落ち着いてください!これは私でも経験したことのない現象です」
スレはどんどん増えていって、わずか2時間足らずで制限の1000を超えてしまった。
驚いた明は次の板を立てたが、次々と書き込みがあってまた次の板を立てるありさまで
結局夕方には板が5枚目になっていた。
明は板の内容をコピーして印刷することだけで精いっぱいで、しまいにはプリンタのインクまで
なくなってしまった。
夜8時を過ぎても書き込みの勢いは止まらず、板はすでに8枚目になっていた。
そこへ陽二が帰ってきた。
「明、池袋でご注文の品を買ってきたぞ」
それは明の好物でもある崎陽軒のシウマイ弁当だった。
「こんなに反応があるとは思わなかった・・・」
「それにしてもすごいな、何枚あるんだ?」
「メモ帳にコピーしただけでも1000枚超えるだろう、紙の追加は買ってきたか?」
「ビックカメラで買ってきたが、これで足りるか?」
「2000枚じゃちょっと心細いな、また明日朝買ってこよう」

明が期待していたのは、「2ちゃんねる」をきっかけにして世論を起こして
「幸せの輪」に圧力をかけることだった。
だがこれがネット世界での「幸せの輪」の評判を一挙に落としめる事になったのである。

       

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