Neetel Inside 文芸新都
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12 桜木町暴動

翌日、鳩山区長が記者会見を開いた。
「これはあるやり取りのテープです」

「種村さん、おたくらの調査を即刻中止して私らに自由な活動をやらせてください」
「で、改善計画はあるの?」
「そんなものない!」
「そちらが変わらないのにこちらに手を引けというのは承知できませんな」
「ふざけるな!行政が同人誌に介入していいのか!」
「無論まともな運営ならば、私らも介入はしない」
「だったら手を引きなさい」
「だめだ、理由はあんたらの行為が消費者契約法に違反するということだ。
いいかね、あんたらの同人誌は毎年12000円の定期購読料のほか
1ページ1800円もの投稿料を取っている。
しかもそのことを一切告げずに勧誘をしたということはこれは立派な消費者契約法違反であり
我々は公務員としてそれを追及し、消費者を守る責任がある」
「我々は会社が商品を提供するという観点とは全く違う」
「消費者契約法は金品の支払いを受けた相手が活動を行う限りは、支払いを受けた相手が
たとえ個人であっても適用される。
よって我々は、
1、高額の費用がかかることを勧誘時にペーパーで告知する
2、会員向けに予算決算の報告を必ず行う
この二つの条件をのまない限りは我々が手を引くことはない!」
「いいかげんにしろ!すべての決定権は篠田主宰の命令により決定される!」

その日の夕方、明と陽二は桜木町の「川村屋」にいた。
「ここは横浜で一番のだし汁を使う蕎麦屋なんだ。おでんならうまいんだが」
「お、うまい。さすが日本最古の駅のそばだな」
日本で最初に開通した新橋横浜間の鉄道のうち、現在も現在地に残っているのは
品川、川崎、鶴見の3駅だけで、新橋は汐留駅を経て現在は博物館新橋停車場になっている。
そして鉄道開通時の「横浜駅」が、現在の桜木町駅なのだ。
現在の横浜駅ができたのが昭和3年、それまでは桜木町が横浜駅だった。
この時、新しい横浜駅の完成を祝って売り出されたのが、現在まで横浜の名物として高い人気を得ている
横浜駅名物「崎陽軒のシウマイ」である。
駅の名前は変われども、桜木町の駅は120年にわたる歴史を見続けてきた。
すると、駅の東側、ランドマークタワーのほうの広場で声がした。
見ると、制服を着た高校生たちが叫び声をあげている。
「みんな若いな・・・」
「ああ、あの世代なら一発で共産主義に染まる」
「でもちょっと変だぞ、共産主義にしては赤旗がない」
その時陽二が叫び声をあげた。
「明!見てみろ!あのプラカード!」
「あ、ありゃ・・・」
プラカードには「高額勧誘をする幸せの輪を許すな」と書いてあった。
「こりゃ大変だ!すぐ鳩山区長に…。区役所まだ開いてるかな・・・」
「明!区長より警察のほうが先だろ!」
「ええと、本富士署は何番だったけな・・」
「ばか!110番で神奈川県警を呼ぶんだ!」
その時二人は和服姿の男にぶつかった。
「あいた・・・」
「すみません・・・え?三遊亭光丸師匠!」
「種村君?」
この男は落語家にして文京区議会議員の三遊亭光丸師匠であった。
総務区民委員会委員長でもあることから、明とも顔見知りだった。
「師匠、それよりどこか交番はありませんか?非常事態で」
「ああ、東口の目の前にあるよ、なにかあったのかい?」
「向こうに高校生たちが騒ぎを起こしていて」
「ほう、これはいかんね。」
「師匠こそなぜ桜木町に?」
「僕はほれ、横浜賑わい座の高座」
間もなく桜木町駅に警官隊が突入し、デモ隊といざこざを起こした。
「デモ隊はただちに解散しなさい」
しかし高校生たちは聞き入れもせず、機動隊と衝突事件を起こした。

       

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