Neetel Inside 文芸新都
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 一方、魔界では幹部クラスの魔族達が王の間に集合していた。すなわち、四柱神、アレン、ダール、ビエルである。全員、跪いている。
「お前達も知っているだろうが、勇者アレクの子孫らが魔界に入ってきた」
 王座の横に女魔族は居なかった。それほど、重大な話なのだ。
「ビエルとアレン、大義だったぞ」
 ディスカルが口元を緩める。ビエルの挑発とアレンの襲撃が切っ掛けとなり、ヒウロ達は魔界へ行く事になったのだ。
「ヒヒヒ。ディスカル様よぉ、もう三つか四つぐらい、町や城をぶっ飛ばしても良かったんだぜぇ?」
 ビエルが舌を出しながら言った。アレンは不快そうに目を瞑っている。
「……フン。それは後の楽しみにしておけ。そして四柱神。奴らが我が城に乗り込んできた時、まずはお前たちがアレクの子孫らの相手をしろ」
 四柱神が顔をあげた。目は闘志で漲っている。
「……良い目だ。まぁ、当然か。スレルミア河川からずっと、戦闘のお預けを食らっていたのだからな」
「死体は残らなくても良いのですか?」
 四柱神のリーダー格、サベルが言った。
「構わん。どういう戦い方をするのかも、お前達に任せよう」
「はっ。感謝いたします」
「四柱神の前には、クソの役にも立たん下級・中級魔族を配置しておけ。いきなり四柱神を相手にさせるより、クソどもを使って勢い付かせた方が楽しめる」
 ディスカルが頬杖をついた。
「そしてアレン。私はお前に聞いておきたい事がある。お前はアレクの子孫らと対峙した。……奴らは強かったか?」
 ディスカルの問いに、アレンが目を開いた。
「奴らはまだ完全に力を開花させていない。唯一、ヒウロが我と肩を並べたが、他はまだまだだ」
「ヒウロ? それは勇者アレクの子孫の事か?」
 ディスカルが口元を緩めながら言った。親子の殺し合い。それは最高の眺めだろう。ディスカルはそう思ったのだ。
「そうだ。奴は我との戦いの中で、ギガデインを覚えた」
 ギガデイン。この言葉に、ディスカル以外の魔族が、ハッとした。
「ほう、ギガデインとは……。これは侮れませんねぇ」
 ダールが眉をひそめながら言った。
「アレン、頭痛はありませんでしたか?」
 ダールが尋ねる。
「……ギガデインの時に強く感じた」
「なるほど……そうですか。わかりました」
 ダールはそれ以上、追及はしなかった。
「おそらく、奴らはこの魔界でさらに成長を遂げる。四柱神、油断するなよ」
「……はっ」
「話は以上だ。ダール以外の者は各々の場所へ戻れ」
 ディスカルのこの言葉で、ダール以外の魔族が王の間から退出した。
「ダール、アレンにさらに闇の力を植え付けろ」
 ディスカルが、王の間に残っているダールに言った。
「それは構いませんが、壊れるのが早くなってしまうかもしれません。元々の肉体は人間ですからね」
「奴が壊れようと私の知った事ではない。今のアレンでは、アレクの子孫ら全員の相手をするのは、おそらく無理だろう」
 ディスカルはアレンの話から、ヒウロ達の現在の実力の大凡を読み取っていた。今はヒウロのギガデインが頭抜けているが、この魔界、この城で他の仲間達も大きな力を得る。そうなった場合、今のアレンでは太刀打ちできない、とディスカルは判断したのだ。
「分かりました。確かにギガデインで頭痛も起きたようですしね。この際、徹底的にやっておきましょう」
 ダールが不気味な笑みを浮かべた。
「あぁ。これでまた楽しみが増える」
 ディスカルは口元を緩めながら、頬杖をついていた。

       

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