Neetel Inside 文芸新都
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「メラゾーマ! オリアーッ」
 メイジのメラゾーマがオリアーのエクスカリバーに宿る。灼熱の業火を纏わせた王剣に、オリアーが闘気を乗せた。
「火炎・空裂斬!」
 炎を纏った闘気の旋風が、魔族の群れを蹴散らす。そのオリアーの脇をセシルが駆けた。速い。ほしふる腕輪の効果で、セシルの動きはとてつもなく俊敏だ。
「隼斬りッ」
 剣閃。瞬く間に魔族の身体が真っ二つとなる。そして。
「ライデイン!」
 聖なる稲妻が残りの魔族を焼き払った。
 魔界。そこはまさに人が住むような場所では無かった。魔族が、魔王が支配する世界である。空は暗雲に覆われており、周囲には薄紫色の瘴気が立ち込めていた。草木など、一本も生えていない。生気という言葉が、とてもイビツな物に感じてしまう。邪気、殺気、怨念、憎悪。そういったモノが、この世界を覆っているようだった。
 ヒウロ達が目指すは魔王の城だ。魔界は広いが、魔王の城へは一本道だった。しかし、その道は険しい。広大な荒野を抜け、奈落の底を繋ぐ一本の橋を渡る。そして、瓦礫の山を登ったその先に魔王の城はそびえ立っているのだ。
 魔界での戦闘は熾烈を極めた。魔族単体での力は大した事は無いのだが、とにかく数で押してくる。メイジの呪文やセシルの魔法剣技はもちろん、オリアーの空裂斬やヒウロのライデインも大いに力を振るった。傷を負ってしまった場合、エミリアの治癒呪文で回復する。このような形で、ヒウロ達は歩を進めていた。
「これだけ戦闘回数をこなせば、嫌でも基礎能力の向上が図れますね」
 先頭を歩くオリアーが言った。魔界での戦闘の積み重ねによって、ヒウロ達は着実にその力を上げていた。剣術・魔力の向上はもちろん、技や呪文そのものも洗練されていくのだ。魔王の城に辿り着いた時、ヒウロ達はどこまで強くなっているのか。
 ヒウロ達は尚も戦闘をこなしながら、道を進んだ。広大な荒野を抜け、奈落の底を繋ぐ一本の橋を渡り切る。この辺りから、急に気温が低下し始めた。身を切るような寒さがパーティを苦しめる。吐く息も白い。だが、ヒウロ達の心は萎えなかった。その心は、まさに燃え盛る炎だ。そして、瓦礫の山を登り切った。
「……ここが、魔王の城」
 ヒウロが呟いた。黒いレンガで造られた、巨大な城だ。無数の黒い魔鳥が空を飛んでいる。ヒウロ達が立つその先には、巨大な城門が威圧感をむき出しにして立っていた。等間隔で配された石造りのたいまつが、城門までの道を形作っている。
 ヒウロ達が歩き出す。すると、石造りのたいまつに炎が灯った。青く、妖しい炎だ。ヒウロ達に呼応するかのように、青い炎が灯っていく。城門の前に辿り着いた。
「みんな、行くよ」
 四人が頷いた。ヒウロが城門に手を掛け、そのままゆっくりと奥へと押す。地鳴りに似た音を立てながら、門は開かれた。ヒウロ達が中に入る。大広間だ。薄暗い。それに冷え込んでいる。正方形の石のタイルが床に敷き詰められ、壁では燭台の炎が揺らめいていた。天井は高い。
「やけに静かだな」
 メイジが言った。声が微かに響く。
「……進んでみましょう」
 オリアーが言った。
「あぁ。隊列を組もう」
 ヒウロ達が隊列を組み、進む。その瞬間だった。
「みんな、上です!」
 オリアーが剣を抜いた。エクスカリバーだ。天井から魔族の群れが襲いかかってくる。
「前からも来る!」
 ヒウロが叫んだ。同じく剣を抜く。前方の扉をぶち破り、魔族の群れが駆けてきた。
「俺が上をやる。ヒウロ、オリアーは前を。セシルはエミリアを守れ!」
 メイジが指示を出しつつ、魔力を溜めた。すぐに両手を上に向かって突き出す。チャージが速い。魔界での戦闘で成長しているのだ。
「イオナズンッ」
 轟音、大爆発。城全体が揺れる。これを皮切りに、前方の魔族とヒウロ、オリアーがぶつかった。何匹かが後衛陣に向けて駆けてくる。
「セシル、頼んだぞ!」
 メイジが叫ぶ。セシルが魔法剣を作り出した。駆けてくる魔物の背後に回り込み一閃。瞬殺だった。
「オリアー、剣を上に突き出せ!」 
 メイジが声をあげた。オリアーが魔族を斬り伏せる。さらに飛び掛かって来た魔族をいなし、首を刎ねた。そして、剣を突き上げる。
「メラゾーマッ」
 オリアーのエクスカリバーに灼熱の業火が宿った。
「ヒウロ、背後は任せましたよ」
「あぁ」
 オリアーとヒウロ、互いに背を預けた。
「火炎・空裂斬ッ」
「ライデイン!」
 魔族の群れは、稲妻と炎を纏った闘気によって蹴散らされた。

       

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