Neetel Inside 文芸新都
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ドラゴンクエストオリジナル
魔界(四柱神戦)

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 オリアーと四柱神のクレイモアが睨み合っていた。互いに目で火花を散らす。まさに一触即発である。
 クレイモアの武器は大剣だった。それはまさに文字通り巨大な剣で、クレイモアの背丈、二メートルを倍にした四メートルはあろうかという得物である。それをクレイモアは軽々と振り回す。片手・両手のどちらでも扱う事ができ、その強烈なパワーで何でも粉砕・両断できた。
 クレイモア自身、全身が筋肉の塊であるため、とにかくパワーに優れた。ただし、呪文は使えない。この点は、オリアーと共通していた。だが、筋力の違いは明らかである。クレイモアは上半身が裸で、六つの腹筋が見事に割れていた。腕も丸太の如く太い。さらに褐色の肌で威圧感を増していた。
「来いよ、クズ。俺様が怖いのか? あ?」
 クレイモアが大剣を肩に担いだまま、不敵に口元を緩めた。眼光は鋭い。
 このクレイモアの挑発に、オリアーは乗らなかった。このまま踏み込めば、大剣の餌食になる事は明白だからだ。オリアーの武器は神器である。神剣・フェニックスソード。だが、武器の射程は大剣の足元にも及ばない。剣術で負ける気はしないが、それすらもねじ伏せるパワーをクレイモアは持っているだろう。オリアーはそう思った。
 オリアーが集中する。闘気を溜める。無心。神器に全てを委ねた。
「腰抜けが。俺様からぶっ潰しに行ってやるよッ」
 クレイモアが飛び上がった。凄まじい跳躍力だ。オリアーはまだ動かない。目で動きを追う。
「砕け散れッ」
 大剣。振り下ろされる。地が、城が揺れる。石のタイルが四方八方に飛散する。土煙。オリアーが身体を開いてかわしていた。
「僕はここで負けるわけにはいかない!」
 神剣。構える。
「フンッ」
 クレイモアが大剣を持ち上げる。そのままグルリと身体をひねった。遠心力。力任せに振り回す。オリアーが身を屈める。頭上を旋風が、竜巻が過ぎ去った。そのまま飛び込む。懐。斬れる。その瞬間だった。
「兜ごと潰れろッ」
 左拳。鉄拳。頬を貫いた。頭が揺れる。吹き飛ばされた。
「うぅっ……!?」
 目まいだ。地面と天井が回転している。脳しんとうを起こしたのだ。素手。素手であの力なのか。オリアーはそう思った。まずい。態勢を。
「整えなければ!」
 だが目が回る。立ち上がれない。
「ぶっ潰れろ、ゴミ虫ッ」
 大剣。振り上げている。オリアーの心臓の鼓動が速くなる。目を瞑った。頭の中が回転している。平衡感覚が取り戻せない。だが。
「まだ終わらない!」
 瞬間、神剣・フェニックスソードが輝く。同時に横に飛んだ。神器がオリアーを導いたのだ。轟音。土煙。大剣が地を粉砕する。
 オリアーが頭を振った。平衡感覚を取り戻す。間髪入れずに闘気を乗せた。
「空烈斬ッ」
 旋風。クレイモアが大剣で受けた。オリアーが闘気をねじ込む。クレイモアが一呼吸おいた。次の瞬間、力任せに旋風を弾き飛ばす。
「力が足りてねぇよ。ヌルいぜ。とっとと本気を出せ」
 クレイモアがダルそうに首をひねった。
「それとも何かぁ? それで本気って事はねぇよなぁ」
 クレイモア。大剣を振り回す。
「このままでは……!」
 攻撃力が足りない。オリアーはそれを痛感していた。

       

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