Neetel Inside 文芸新都
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 セシルが魔法剣を構える。ディーレ。これが真の姿なのか。明らかに雰囲気が変わっている。
「……なんて姿なの」
 セシルが思わず声を漏らした。醜い。一言で表すならこうだ。だが、確実に力をあげている。殺気も先程とは比べ物にならない。
 ディーレが白い髪を揺らす。般若の顔。裂けた口から、息が漏れていた。セシルが息を呑む。ディーレの殺気がセシルの全身を刺激する。
「殺してやる」
 言って、ディーレが腕を振り上げた。顔が笑っている。鞭。飛んできた。速い。セシルが身をかわす。反撃を。次の瞬間、グリンガムの鞭がセシルのわき腹を貫いた。激痛が走る。近付けない。下手に近寄れば、鞭で叩きのめされる。だが、どうにかして近付かなければ。
 セシルが鞭を魔法剣で捌く。だが、近付けない。セシルには近付かずに攻撃出来る方法もある。魔法剣技がそれだ。だが、実際に撃つ事は難しかった。隙が大きすぎるのだ。鞭の射程距離、ディーレの攻撃速度。この二つの問題を前にして撃てるのか。そして何より、魔法剣技がディーレに通用するのか。
「セシルさん、私が敵に聖なる光を浴びせます。その隙に」
 エミリアの声。聖なる光。ディーレを焼き、吹き飛ばしたあの力だ。期待できる。セシルはそう思った。魔法剣技が通用する、しないは後回しだ。やってみる。
「あなたのその醜さ、正視に耐えないわよ!」
 セシルが挑発した。ディーレの目が血走る。これで。セシルが鞭を避ける。その瞬間、背後から光。エミリアの聖なる光だ。光がディーレの身体を焼いて行く。ディーレが怯んだ。セシルはそれを見逃さない。
「これで!」
 セシルが魔法剣を頭上に掲げ、円を描いた。
「エアロブレイドッ」
 エメラルド色の衝撃波。ほとばしる。
「バカがァッ」
 ディーレの金切声。次の瞬間、衝撃波の軌道がねじ曲がった。グリンガムの鞭で弾いたのだ。衝撃波がディーレの脇を駆け抜けていく。ディーレがニタリと笑った。勝った。目でそう言っていた。
「終わりよ、虫けらがァッ!」
 鞭を振り上げる。だが、セシルはまだ諦めていなかった。
「エミリア! 私の魔法剣に聖なる光を!」
 魔法剣技は通用しなかった。魔法剣だけでは力不足。ならば、魔法剣に聖なる光を加えたらどうなる? 魔法剣と聖なる光。この二つの力を合わせれば。
 エミリアの聖なる光。セシルがその光を魔法剣に纏わせた。エメラルド色の魔法剣の周囲を、白い光が覆っている。風と光の魔法剣。
「一撃で決めるッ」
 鞭。避けた。懐に飛び込む。セシルが目を見開いた。魔法剣が大きくなる。風の音が鳴り響く。光が増していく。斬ってみせる。セシルが魔法剣を握り締めた。
「グランドクロスッ!」
 魔法剣。閃光。風と光がディーレの胸を十字に斬り裂いた。
 ディーレがニタリと笑う。次の瞬間。
「ゲッ!?」
 十字に斬り裂かれた傷口から、光が溢れた。聖なる光。
「グバッ」
 爆発。ディーレの身体が光の粒子へと変わって行く。その様は、まさに魔の者が浄化されていくかのようだった。
「……終わったわ」
 セシルが魔法剣を消した。手の甲で額の汗をぬぐう。強敵だった。一人では勝てなかった。エミリアが居たからこそ、勝てた。
「セ、セシルさん、ごめんなさい、私」
「……エミリア、ありがとう。あなたが居てくれて、良かった」
 セシルのこの言葉に、エミリアがぎこちない笑顔を見せた。
「さぁ、先に進みましょう。ヒウロ達も、もう進んでるかもしれない」
「……はい」
 息を切らしつつも、二人は先へと進んで行った。

       

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