ヒウロとアレンの剣が激しくぶつかり合っていた。アレンの殺意と、ヒウロの正義がせめぎ合う。
「最初からこうしていれば良かったのだ!」
アレンが笑っていた。父は戦いを楽しんでいる。ヒウロはそう思った。父の中の人間の心は、もう消えてしまったのか。人間にはもう戻せないのか。親子として解り合う事は、もう出来ないのか。だが。
「俺は勝ってみせるッ」
剣を振るう。アレンが身をかわした。隙。剣が飛んでくる。身体をひねってかわす。アレンの右手。魔力。
「ベギラゴンッ」
火炎がヒウロの足元から巻き起こる。後ろへ飛んでかわした。その瞬間、ヒウロはハッとした。凄まじいまでの殺気を、肌で感じたのだ。この殺気、人間界で感じた事がある。ヒウロはそう思った。
「地獄の雷……!」
アレンの剣が、闇色に染まっている。ヒウロが剣を天に突き上げた。聖なる稲妻。呼び寄せる。
「ジゴスパークッ」「ギガデインッ」
二つの稲妻が、中央でぶつかった。衝撃波が円状に巻き起こる。それが烈風となり、両者の髪を、マントを揺らめかした。
戦う。もうそれしか道は無い。ヒウロは心を決めていた。父を殺してしまうかもしれない。だが、それでもやるしかないのだ。でなければ、自分が死んでしまう。アレンに殺されてしまう。
当然、父を救いたいという想いはあった。しかし、最終目的は魔族を滅ぼすという事なのである。そのために親子の感情は、捨てる。それはヒウロにとって、苦渋の決断だった。
二つの稲妻が同時に消し飛んだ。互角。両者の実力は拮抗していた。剣でも呪文でも、決着がつかない。
「……ギガデインと剣の融合」
ヒウロが呟いた。四柱神のサベルを一撃の元に葬り去った、あの技である。ヒウロの切り札と言っていい。勝てる、とまでは言わないが、状況は好転する。それは予感ではなく、確信だった。それほど、あの技は強力無比なのだ。
「父さん……」
目を瞑る。親子の感情を捨てろ。それはもう決めた事だ。ヒウロは自らにそう言い聞かせた。そして、目を開ける。闘志が、宿っていた。
「……ほう」
アレンが口元を緩めていた。何か仕掛けてくる。そう感じ取ったのだろう。ヒウロが一度だけ、大きく息を吐いた。そして、稲妻の剣を天に突き上げる。
「ギガデインッ」
稲妻。轟音と共に降り注ぐ。剣を闘気で覆った。その剣に、ギガデインを纏わせる。稲妻・闘気・剣。三つの融合。
「ギガソード!」
螺旋状となったギガデインが剣を覆い尽くしている。電撃の音が、耳を突く。飛散した稲妻が、床を貫き破壊する。
「ほう、なるほどな。そう来たのか」
そう言って、アレンが笑いだした。何がおかしい。ヒウロがキッと睨みつける。
「おっと、悪い。その技をバカにしたわけではないぞ」
アレンの剣が、闇色に染まって行く。地獄の雷。まさか。ヒウロはそう思った。
「ジゴスパーク!」
瞬間、アレンの剣にジゴスパークが絡みついた。
「……ジゴソード。まさか、お前が我と同じ発想を持ち出してくるとはな」
ヒウロに戦慄が走った。