Neetel Inside 文芸新都
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 視線は外さなかった。ダールの目。ギガソードを振り上げる。この目の前の魔族に、ダールに勝つ。ヒウロが吼えた。
「ほう、これがアレンを破った技か?」
 ダールがギガソードを両腕で受け止めていた。
 しかし、ヒウロの闘志は萎えなかった。ダールは父であるアレンよりも、数段強いのだ。認めたくはない。だが、事実だった。そのダールにギガソードを受け止められた。ある意味、当然の結果だ。このギガソードで倒せる程、ダールは甘くはない。
「まだ何かあるな。見せてみろ」
 ダールが言う。ヒウロが目を見開いた。さらにギガソードを振るう。
 最強の必殺技、ギガブレイク。稲妻・闘気・剣・勇気の四つの力を一気に解放し、相手に叩きつける最強無比の技。この技ならば、ダールも無事では済まされないはず。ヒウロはそう思った。だが、倒せるのか。
 自分のギガブレイクで、ダールを滅ぼせるのか。これだけが疑問だった。ダメージは確実に与えられるだろう。しかし、滅ぼせるかどうかは分からない。もし滅ぼせなかったら、その後はどうなる。ギガブレイクを撃ち放てば、剣は普通の状態に戻る。そうなれば、ダールは一気に勝負を決めにくるだろう。その状態で、再びギガソードを作る機会は得られるのか。
 だが、撃つしかない。ギガデインもギガソードもダールには通用しなかった。ならば、ギガブレイクしかない。
 ダールがギガソードを受け止める。そのダールの目に、殺気が宿った。
「見せないのならば、こちらから行かせてもらうッ」
 ダールが僅かに右手を引いた。オリアーを貫いたあの必殺技。
「雷光一閃突きッ」
 いかずちの刃。ヒウロの胸を貫く。手足の指先まで、痛覚が迸った。次いで殺気。やはり。オリアーを追い込んだのと同じように、撃ってくる。ダールの奥義。
「閃光烈火拳ッ」
 ヒウロが目を見開く。これをまともに食らう訳にはいかない。かわせるのか。受け切れるのか。いや、かわしてみせる。受け切ってみせる。ヒウロがそう決意した瞬間、ブレイブハートが強烈な光を放った。視界が、白く染まる。ダールの姿だけが、ヒウロの目に映った。なんだこれは。ヒウロはそう思った。
「選ばれし者よ、我が力を解放するのだ。そして、剣聖シリウスの後継者と力を合わせよ」
 父の声が聞こえた。ダールの拳。見える。ゆっくりと、スローモーションのように、動いている。身体をひねった。いつものように動けた。まるで、時間軸が違う。ヒウロはそう思った。八連撃。全てをかわし切る。視界が、元に戻った。
「なっ……!?」
 ダールが声を漏らす。状況を理解できていない。そんな表情をしている。
 何が起きたのか。ヒウロもそう思った。閃光烈火拳が放たれた瞬間、時間軸が自分だけズレているような感覚に襲われた。いや、感覚だけではない。そのズレた時間軸の中で、自分はしっかりと動けた。そして、閃光烈火拳の八連撃を全てかわしていた。
 神器、ブレイブハート。神器の力なのか。ヒウロはそう思った。今にして思えば、ブレイブハートは他の神器とは違っていた。オリアーやメイジの神器は、道具として実体があるのだ。だが、ブレイブハートは違う。心、魂。そういった、抽象的なものなのだ。そして、神器に眠る力。
「……オリアー」
 ヒウロが視界の端にオリアーを捉える。父が、いや、神器がオリアーと力を合わせろと言っていた。つまり、独力ではダールを倒す事は出来ないと言う事だ。
「僕は……まだ、戦えます……!」
 オリアーが立ち上がる。そして、神王剣・シリウスを構えた。全身を震わせている。
 一振り。それが限界だ。オリアーはそう思った。そして、その一振りに全てを込める。最強の必殺剣、ギガスラッシュ。
 ヒウロがオリアーの目を見つめる。それだけだった。それだけで、互いの意思を交換した。自分が機会を作る。その機会に、オリアーの最強の必殺技を叩きこむ。そして、それに自分のギガブレイクを合わせる。
「……行くぞ、ダールッ!」
「さっきの閃光烈火拳、かわしたのはマグレだろう。次はないッ!」
 両者が駆ける。決着の時は近い。

       

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