Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

「そうか、貴様らだな。ごうけつぐまを倒したのは」
 低く重みのある声。だが、人間ではない。オリアーとヒウロが再び剣を抜き、構えた。只者ではない。声と殺気だけでそう判断できたのだ。
「何者だ、姿を見せろっ」
 ヒウロが声をあげる。目を左右に動かし、常に周囲を警戒する。ピリピリと殺気が全身を刺激してくる。近づいている。
「こんな人間の子供に、ごうけつぐまを倒す力があるとは思えんが」
 ソイツは宙に浮いていた。ボロボロの青いローブを羽織り、フードをかぶっているので顔は見えないが、魔物とは全く違う異質なモノを感じとれる。
「ま、魔族」
 目を見開き、メイジが呟いた。
「小僧、我々を知っているか」
 魔族、それは知能ある魔物の事である。力も強さそのものも魔物たちの数段上を行く。そして、魔王の眷族、忠実なる部下。魔族が存在する、すなわちそれは、魔王が存在する事と同義。魔族は個体として存在し、人語を扱う事が出来る。そして魔物を意のままに操る事も可能だ。全ての点において、魔族は魔物を凌駕する存在なのである。
「や、やはり魔王は……!」
「この世界は、もうすぐ我々魔族の物となる。人間は不要だ。今はまだ地ならしの段階でしか無いが、ごうけつぐまを倒せる……それもまだ子供だ。そんな存在を放っておく事は出来ない」
 殺気が強くなった。瞬間、風が強く鳴り、周囲の木々がざわつき始める。
「このファネルが、この場で殺しておくとしよう」
「ヒウロ、オリアー! 気を引き締めろッ!」
 メイジが叫んだ。風が止む。刹那、ファネルの右腕、剣のような刃がヒウロを襲う。すかさず剣で弾き返すも、態勢が崩れた。攻撃力がケタ違いだ。
「つ、強いっ」
 ファネルが反転、再びヒウロに襲いかかる。
「ヒウロ、下がってください!」
 火花。オリアーが受け止めた。
「ほう」
 ファネルが声を漏らした。ファネルの右腕は、オリアーの剣によって止められていた。ギリギリと金属が擦れ合う。火花が飛び散る。
「こんな子供が居るとは」
「メラミッ」
 メイジはメラミを唱えた。火球は螺旋を描き、ファネルへと突っ込んでいく。
「そんなチンケな呪文で」
 瞬間、ファネルは左手を突き出した。周囲の空気が冷たくなっていく。いや、凍り付いていく。
「ヒャダイン」
 雹の嵐。氷のつぶてが吹き荒れ、メラミが消し飛んだ。さらにメイジをも包み込み、吹き飛ばす。
「メイジさんっ」
 オリアーが叫んだ。
「次はお前だ」

       

表紙
Tweet

Neetsha