Neetel Inside 文芸新都
表紙

ドラゴンクエストオリジナル
スレルミアの町〜

見開き   最大化      

 ヒウロ達はスレルミアの町を訪れていた。リーガルの言っていた、クラフトという人物に会うためだ。
 リーガルは、呪文を使う事ができないオリアーに対して、何らかの魔力を感じる、と言っていた。リーガルは、自分ではそれ以上の事は分からない、と言っていたが、このスレルミアの町に居るクラフトなら、何か分かるかもしれないらしい。
 スレルミアの町は、武器の町だった。それもそのはずである。ここ、スレルミアは剣聖シリウスの生まれ故郷であり、剣の道を志す者たちが多く集まる町なのだ。故に、オリアーの表情はどこか好奇心を覗かせていた。町を歩いている人物を見ると、ほとんどの人が剣を持っているのだ。旅人、町人問わずである。オリアーの剣術の腕は決して悪くない。だが、こうして歩いていると、自分はまだまだちっぽけな存在だ、という気がオリアーはしていた。
 この町で何を得るのか。クラフトに会う事にしてもそうだが、ヒウロ達はこの旅の先々で、成長を遂げていかなければならなかった。今の自分達では、魔族に対抗するにはあまりにも無力なのだ。勇者アレクの血を引いていようと、強さとしてはまだ未熟だった。ファネルもバーザムも、ギリギリで切り抜けているに過ぎない。そして、四柱神との遭遇。これが大きかった。自分達の力の無さを痛感したのだ。しかし、結束は固くなった。共通の旅の目的も出来た。だからこそ、ヒウロ達はこれから成長を遂げていかなければならないのだ。
 ヒウロ達は、クラフトに関する情報を集めた。この町に来た一番の理由がクラフトなのだ。どうやら、クラフトは剣聖シリウスとゆかりのある人物らしい。子孫、とはまた別のようだが、かつてのシリウスとは親しい間柄の一族のようだ。先祖代々、一本の剣を守り抜いてきた、という事も分かった。まずは会ってみるべきか。ヒウロ達は、情報を頼りにクラフトの家に向かった。
 さすがに歴史を感じさせる大きな屋敷だった。何度か改築された後は見えるが、威厳のような物を匂わせる。庭も広い。家の出入口の前には、剣士の銅像が左右に置かれていた。こう言っては悪いが、リーガルの家とは格が違う。三人はそう思った。
「すいません、どなたかいらっしゃいますか」
 ヒウロが家の出入口の前で大きな声を出す。間も無くして、家政婦らしき女性が出てきた。要件を伝える。無論、リーガルからの紹介だという事も話した。リーガルの名を出すまでは、何となく聞いている仕草だったが、名を出した途端に家政婦が表情を変えた。リーガルはそれほどの人物らしい。
 家政婦が引込む。しばらくして、立派なあごひげを蓄えた壮年の男が出てきた。この男がクラフトか。紳士を匂わせる恰好だ。こう言っては悪いが、またも三人はリーガルとは格が違う、と思ってしまった。
「ほう、あなたたちが。思っていたよりもずっと幼い」
 クラフトはヒウロ達をもっと大人だと想像していたようだ。ヒウロとオリアーが十七。メイジが十八である。壮年の男からみれば、まだまだ子供だった。
「それで、リーガルさんが言っていたのはどなたですかな」
「僕です」
 オリアーが前に出た。すると、クラフトの表情が変わった。穏やかだったのが、急に凛々しくなったのだ。
「ほう、剣士ですか」
「はい。呪文は使えません」
「……なるほど。所でどうでしょう、屋敷の中をご覧になりませんか。そのついでがてら、我ら一族と剣聖シリウス様の関係のお話でも致しましょう」
 唐突な話だった。だが、断る理由は無い。それに剣聖シリウスの話にも興味があった。三人は頷き、屋敷の中を案内してもらう事になった。
 ヒウロ達は、屋敷の色んな場所の説明を受けながら、シリウスの話を聞いた。クラフトの一族とシリウスは、かつて盟友だったという。だが、剣の腕はシリウスには敵わなかった。そして、シリウスは勇者アレクと出会い、旅に出た。クラフト一族は、旅には同行しなかったが、このスレルミアの町の守護にあたったという。そして、アレク達は魔王を滅ぼし、それぞれの故郷に帰った。しかし、シリウスは違った。スレルミアに帰っては来たが、また旅に出たという話だった。その後の事は詳しくは分からないが、その旅に出る際にクラフト一族に託された、一本の剣。
「それが王剣、エクスカリバーです。シリウス様は、我ら一族にこの剣を守り抜いてくれ、と言われたそうです。再び、世が荒れる事を危惧されておられたのか、旅に出て自らの身の安全の保証が出来ないため、我らに託したのか。今となっては、理由は分かりませんが、我ら一族に伝わる伝説です」
 大きな扉の前。微かだが、扉の向こうから闘気を感じた。しかし、暖かい。優しい。オリアーはこう感じ取った。
「この扉の向こうに、エクスカリバーがあります。……オリアーさん、扉を開けられますか? 試してみてください」
 まるで、普通は開ける事が出来ない。と言わんばかりの口調だった。

       

表紙
Tweet

Neetsha