Neetel Inside 文芸新都
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ドラゴンクエストオリジナル
ルミナス王国〜

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 その頃、ルミナスはヒウロ達の予想通り、魔物達からの襲撃を受けていた。その魔物達を率いるはファネル。かつて、ヒウロ達と対峙し、ライデインによって退けられたファネルである。
 ファネルはディスカルの命令により、ルミナスを襲撃していた。多くの魔物も率いてきた。ディスカルから、ルミナスを襲撃すればヒウロ達がやってくる、と言われたのだ。復讐の機会。ライデインでスタボロにされた屈辱を晴らす。無論、ディスカルからヒウロらを仕留めるように、とも言われていた。
「魔物達よ、人間を殺せ。一人たりとも逃がすな」
 悲鳴。叫び。爆発音。青いローブの下で、ファネルはニヤリと笑っていた。

「うあぁっ」
 住民の叫び。魔物達が追い回している。抵抗できる術はない。住民達は逃げ回るだけだ。ルミナスの兵――ルミナス騎士団が懸命に抵抗しているが、焼け石に水だった。数が違いすぎるのである。それに加え、長らく、実戦から遠ざかっていた。このままでは、ルミナスは制圧されてしまう。
「た、助けて、お、お母さん」
 子供。ガタガタと震えている。魔物がニタリと笑った。殺される。その瞬間。上空より光。ルーラだ。
「ッ」
 魔物の首が、身体から離れた。ニタリと笑ったままだ。次いで身体が倒れ、死体が煙となって消える。
「大丈夫?」
「あ、あ」
「私が来たからには安心しなさい。さぁ、どこかに隠れて」
 手には魔法剣。風が鳴いている。風の魔法剣だ。背後。魔物。
「これ以上、ルミナスをやらせはしない」
 斬る。真っ二つだ。その様を住民が見ていた。銀色の軽装鎧。風になびくブロンドの髪。意志の強い瞳。そして、魔法剣。
「お、音速の剣士だ! 音速の剣士、セシル様だ!!」
 そう、この人間こそ音速の剣士の異名を持つ、セシルだった。エクスカリバーが封印されている部屋に入れた人物。エクスカリバーと対面するにふさわしい人間。
「ルミナス騎士団は?」
「も、もう出動してます。ですが、太刀打ちできないようで」
「わかった。下がっていなさい」
 セシルが駆けた。魔物を斬る。進む。どこかに親玉が居るはずだ。魔物の数が増えてきた。親玉はこの先か。周囲。ひどい有様だ。家には火が付き、住民の死体が転がっている。倒壊している家屋もあった。ここにはもう、自分以外に生きている人間は居ないだろう。セシルはそう思った。
「お前達……許さない」
 魔物がワラワラと寄ってくる。セシルが集中した。風の魔法剣が大きくなる。風の音が強くなる。その気に圧されたのか、魔物の群れが一斉に飛び掛かってきた。苦し紛れの特攻だ。セシルが魔法剣を頭上に掲げる。そしてグルリと円を描き、叫んだ。
「エアロブレイドッ」
 振り下ろす。瞬間、エメラルド色に輝く衝撃波が一直線に走った。瞬間、魔物達が消し飛んでいく。断末魔。轟音。凄まじい衝撃波。
「一瞬で敵を消す。これが音速の剣士の名の由来」
 軌跡を見つつ、セシルが呟いた。

「……なんだ?」
 ファネルが呟いた。轟音が聞こえたのだ。そちらの方向に目をやった。エメラルド色の衝撃波。魔力。
「勇者アレクの子孫らが来たか」
 言って、ニヤリと笑った。復讐してやる。急いで、魔力の元を辿った。居た。人間。だが、一人だ。ヒウロじゃない。それ所か、その仲間でもない。
「誰だ、貴様は」
 ヒウロ達以外にここまで出来る人間が居たのか。ファネルはそう思った。
「セシル。人は私の事を音速の剣士と呼ぶ」
「音速の剣士? いや、その前にその声。貴様……女か?」
 ファネルが言った通り、セシルは凛々しくも女性的な声をしていた。

       

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