Neetel Inside 文芸新都
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「ぬぅぅッ」
 ファネルが呻く。魔法剣士も加わって来た。このままでは。ここまで腕を上げたのか。本気を出した自分でも手に余る。三本の剣が引っ切り無しに襲いかかってくるのだ。捌き切れない。
「うぐッ」
 斬られた。さらに来る。
 ファネルの動きが鈍った。ヒウロ達は剣撃を緩めない。一撃、二撃とファネルの身体に刃を浴びせた。勝てる。あとはトドメの一撃を放り込むだけだ。
「ヒウロ、メイジさんの元へ」
 オリアーが言った。ヒウロが頷く。ライデインだ。
「隼斬りッ」
 去り際に剣技を叩きこむ。ファネルが顔を歪めた。
「メイジさんッ」
 メイジが頷いた。左手をヒウロの背に添える。闘気。雷雲。
「お、おのれぇぇっ」
 ラ、ライデインだ。バカな。人間の分際で。この自分に勝つのか。ファネルが焦る。完全に表情に出ていた。
「邪魔だ、ゴミどもッ」
 ライデインを止めなければ。オリアーとセシル。ゴキブリどもが。まとわりつくな。殺してやる。だが、当たらない。致命打にならない。何をしても捌かられる。アレクの子孫。その仲間。ここまで。そして音速の剣士。
「うおぉぉぉっ!」
「終わりだ、ファネルッ」
 オリアーが懐に飛び込んだ。そのまま剣を振り下ろし、ファネルの身体を斬り裂く。鮮血が宙が舞った。間髪入れずに、手首をひねった。剣の束尻。ファネルの顎を跳ねあげる。ファネルの目に赤く燃え上がる空、雷雲が飛び込んできた。
「ライデインッ」
 バカな。この魔族ファネルが。こんなクズどもに。閃光。雷撃。
「ディ、ディスカル様ぁっ」
 貫く。
「ファネルはライデインを受け切る! これだけじゃ倒せないっ」
 ヒウロが叫んだ。
「メイジさんっ」
 オリアーがエクスカリバーを構えた。メイジが頷く。
「メラミッ」
 刀身に業火が宿った。そして。
「火炎斬りッ」
 斬り下ろす。
「グギャァァァッ」
 断末魔。雷撃と火炎に身体を貫かれ、ファネルは屍となった。
 かつて、獣の森ではじめて遭遇した魔族。あの時は手も足も出なかった。そんな強大な存在を今、倒した。ヒウロ達は実感した。強くなっている。魔族に対抗しうる力を備えつつある。
 雷雲が晴れた空は、赤く染まっていた。

       

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