Neetel Inside 文芸新都
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 オリアーは書物庫で、セシルが仲間になりたいと言っている、という旨をヒウロとメイジに話した。ヒウロ達は最初は戸惑っている様子だったが、すぐに受け入れた。音速の剣士と謳われている人物なのだ。戦力増強はもちろん、魔族を倒す、という共通の目的を持つ仲間が増えるのは喜ばしい事だった。
 内心、メイジは反対意見を言おうか迷っていた。セシルの性格があまり好きではないのだ。しかし、振り払った。そんな小さな事で大事を見誤るなど、愚者の極みだ。自分がセシルに合わせれば良い。そう考えた。
「それで二人とも、何か分かりましたか?」
「あぁ。この本を見てくれ」
 メイジはそう言い、机の上に本を広げた。内容は勇者アレク達と、魔族との戦いに関するもののようだ。
「ここだ」
 メイジが指差す。四つの道具らしきものが載っていた。一つは剣。一つは杖。あとの二つは何やら、丸い球体で光か何かのようだ。神器。本にはそう書かれている。
「……神器、ですか?」
 オリアーが呟いた。四つの道具。それは神が作りし武具だ。本に書いてある内容によると、勇者アレク達は、自身の力とこの神器の力によって魔族を滅ぼしたという。神器が無ければ、魔族を滅ぼす事は出来なかった、とも書かれている。
 神器は誰にでも扱えるわけではなかった。選ばれし者である必要があるのだ。さらに神器には意志があった。命と言い換えても良い。アレク達と神器は互いに信頼し合い、力を合わせた。その結果、魔族を滅ぼす事に繋がったのだ。だが、その魔族が現世に蘇った。理由は定かではないが、世界に危機が迫っているのは間違いなかった。
 神器は魔族達との戦いを制した後、自らを封印する事にした。強力すぎるその力は、世界を破滅に導きかねない、と判断したのだ。かつての使い手であったアレク達も、その選択に頷いた。そして、神器はこう言い残していた。再び、世が破滅の危機に陥りし時、我ら目覚めん、と。
「今がその時だと俺は思う」
 ヒウロが言った。他の二人も頷く。魔王ディスカルが現れた。魔族が復活したのだ。神器が言い残した言葉が本当なら、今こそ目覚める時のはずだ。
「魔族を倒すなら、俺達も神器を手に入れる必要がある。だが、それには資格が必要らしい」
 メイジが言いつつ、本のページをめくる。選ばれし者でなければ、神器は扱えないのだ。あるページでメイジが手を止めた。何かの紋章が四つ描かれている。
「……良く見ていてくれ」
 言いつつ、メイジが紋章の上に手をかざした。すると、一つ紋章が銀色に光り輝いた。本には魔法が掛けられていたのだ。そして、この輝きが示す意味。
「俺は選ばれし者、という事らしい」
 次のページには、紋章が光り輝く者こそ、神器を手に入れる資格を持つ者、と書かれていた。
 さらにヒウロが手をかざす。同じように一つの紋章が光り輝いた。つまり、ヒウロも選ばれし者、という事になる。
「オリアー、お前もやってみてくれ」
 オリアーが頷いた。手をかざす。
「……僕も、ですか」
 紋章の一つが光り輝いている。選ばれし者。ヒウロ、メイジ、オリアーの三人は神器を扱う資格がある、という事だ。
 メイジがさらにページをめくった。そこには、神器が封印されている場所が示されていた。それぞれ、違う場所に封印されているようだ。方角もバラバラだ。ルミナス王国を中心に据え、東西南北と場所が分かれている。
「一番の問題はこの部分だ」
 メイジが指差す。そこには、神器を手に入れる方法が書きしめされていた。その内容とはすなわち、資格ある者ただ一人で訪れる事。与えられた試練に打ち勝つ事。そして、その試練は過酷なものであり、命を落とす事を覚悟しなければならない事。以上の三つである。
「命を落とす、ですか。魔族と戦う前に死にたくありませんね」
「どの道、俺達が魔族に勝つには神器が必要なんだ。アレク達ですら、神器の力に頼った。答えは決まってるじゃないか」
 ヒウロが言う。それを聞いた二人は、黙って頷いた。
「メイジさん、オリアー、神器を手に入れよう」
 決意は固まった。あとは行動に移すだけだ。
「でも、後の一個の神器。この神器の選ばれし者って誰なんでしょうか」
 オリアーが言う。確かに疑問な点だ。
「セシルじゃ?」
 ヒウロがピンと来ていた。音速の剣士セシル。オリアー、メイジも納得した。十分に有り得る。
「可能性は高いな。セシルにも紋章に手をかざしてもらおう」
 メイジが言った。二人が頷く。
「僕が呼んできます」
 神器使いが一気に四人揃うかもしれない。三人の胸は高鳴っていた。

       

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