Neetel Inside 文芸新都
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 オリアーは白いほこらの中に入り、神器獲得のための試練を受けようとしていた。
 ほこらの中央には、機械で出来ている人形らしきものがポツンと置かれているだけで、他には何も無かった。声だけが、どこからか聞こえてくるだけだ。
「汝が剣聖シリウスの力を受け継ぎし者か」
「この王剣エクスカリバーがその証明となるのなら」
 オリアーが腰のエクスカリバーを鞘から抜いて見せる。
「良かろう。汝をシリウスの後継者として認める。汝、神器を手に入れるべく、試練を受けるか?」
 少しの沈黙。
「受けます」
 瞬間、中央の機械人形から音が聞こえた。そして動きだす。右手にサーベル。左手にクロスボウ。青を基調としたボディに、足が四本ついている。
「ならば、このキラーマシンを倒してみせよ」
 これを最後に声は聞こえなくなった。
「キラーマシン……古代に魔族が作り出した殺戮機械、とは聞いていますが」
 オリアーが言う。
 オリアーの言う通り、キラーマシンは魔界の技師が設計・作成した戦闘専用の殺戮機械だ。勇者アレクの時代に最も猛威を振るったとされており、感情や痛覚を持たないという機械の特性から、自身が壊れて動かなくなるまでとにかく攻撃を続ける、という厄介さを持っていた。
 不意にキラーマシンの目が赤く光った。
「……私は命を吹き込まれたキラーマシン」
 喋り出した。それも流暢な口調だ。
 命を吹き込まれた。そんな事が可能なのか。オリアーはそう思った。だが、目の前のキラーマシンはただの機械では無さそうだった。声こそはまさしく機械音といった感じだが、どこか人間味がある。闘志を感じさせるのだ。
「選ばれし者よ、神器を手に入れたければ、私を倒さねばならない。そう、剣聖シリウスの剣術がインプットされた私をだ」
 オリアーの表情が引き締まる。シリウスの剣術。キラーマシンは確かにそう言った。一体、どれほどの物なのか。無論、想像など付くはずもない。伝説だけが残されているだけなのだ。
「……シリウスさんの剣術ですか」
 オリアーがエクスカリバーを構えた。急がねば。オリアーは焦っていた。ほこらに来るまでの道中に感じていた嫌な予感は、尚も消えていないのだ。しかし、相手はキラーマシンだ。それもシリウスの剣術がインプットされている。勝てるのか。いや、勝たなければ。
「試練を開始する」
 キラーマシンが右手を振り上げた。サーベル。オリアーがエクスカリバーを構えた。受け止めるつもりだ。まずはこれで相手の剣撃の重さを確かめる。
「うぐっ!?」
 金属音。重い。身体が思わず沈んだ。さらに剣が飛んでくる。身体を開いてかわす。避けざまに一閃。金属音。サーベルで防がれていた。あれを受けるのか。オリアーはそう思った。普通ならば、攻撃の直後は一つの隙になる。つまり、防がれる事なく一撃として入るはずなのだ。所が、キラーマシンはそれを防いだ。シリウスの剣術。オリアーの頭にこれが過る。
 キラーマシンが僅かに右手を引いた。溜めた。何か来る。オリアーはそう直感した。
「疾風突き」
 風が鳴く。鎧を削った。火花が飛び散る。速い。
「み、見えない!?」
 右手を引いている。溜めている。また来る。
「疾風突き」
 瞬間、オリアーが身体を大きく開いた。旋風が真横を駆け抜けていく。疾風。そんな生易しい物ではない。相手に先手を取らせてはダメだ。オリアーはそう思った。
「攻撃に転じなければ」

       

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