Neetel Inside 文芸新都
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 呪文乱舞。まさにこう表現するにふさわしい。メイジとカリフの戦いである。
 カリフ。神器が生み出した賢者。カリフの魔力は強大だった。メイジの呪文をことごとく相殺するのだ。しかし、メイジはカリフに違和感を感じていた。カリフは本気を出していない。まだ力を隠している。メイジはそう思った。それもそのはずだった。カリフはまだ中等級呪文しか使っていないのだ。
「何故、中等級呪文しか使わない」
 メイジが言った。
「それは汝とて同じ事だろう」
 コイツ。メイジが心の中で言った。
 カリフはここまでを小手調べだと思っていた。お互いに中等級呪文で相手の力をある程度、測る。いわゆる、挨拶のようなものだ。
 しかし、メイジはすでに全力だった。メイジは未だに中等級呪文までしか扱えないのだ。その上を行く上等級呪文は何一つ習得していない。それは、メイジが得意としている火炎系呪文も例外では無かった。
「では、ここからが本番だ」
 カリフの魔力が気炎のように立ち昇る。それを感じ取ったメイジが舌打ちをした。さっきとは力が全く違う。そう感じたのだ。
「行くぞッ」
 両手。カリフが突き出す。周囲の空気が凍てついていく。
「マヒャドッ」
 来た。メイジはそう思った。冷気系上等級呪文。無数の氷柱がメイジへ向かって突っ込んでいく。どうする。心の中で呟く。今更、ジタバタしてどうにかなるわけでもない。出来る事をやるまで。メイジが右手を突き出した。
「ヒャダルコッ」
 冷気系中等級呪文。
「む」
 カリフが首をかしげた。ヒャダルコ? ナメているのか。そう思った。
 二つの呪文が交わる。しかし、一秒と経たずにマヒャドがヒャダルコを消し飛ばした。勝負にすらなっていない。
「ちぃッ」
 無数の氷柱。メイジの全身が切り刻まれる。メイジがその場で片膝をついた。すでに息が荒い。
 やはり、中等級呪文では対抗できない。メイジはそう思った。いや、分かっていた事だ。しかし、どうする。自分が扱える攻撃呪文は中等級呪文が限界なのだ。相手は上等級呪文が使える。この力量差。覆せるのか。
「選ばれし者よ。貴様……」
 両手。凄まじいエネルギーが集約されていく。
 カリフは考えた。メイジはマヒャドをヒャダルコで返した。自分のマヒャドがみくびられたか? いや、それだと辻褄が合わない。小手調べの時点で互いの魔力は互角、と確認したのだ。となれば、上等級呪文が使えないのか? だが、どの道、これで分かる。
「イオナズンッ」
 爆発系上等級呪文。閃光。イオナズンは各上等級呪文の中でも、最高クラスの威力を持つ呪文だ。生半可な抵抗では、大ダメージをもろに受ける。カリフはメイジの実力をこれで確かめるつもりなのだ。メイジが歯を食いしばる。
「マジックバリアッ」
 呪文防壁。イオラで中途半端に反撃するよりも、単純に防御に回った方が良い。メイジはそう考えたのだ。
「……貴様、何を考えている」
 大爆発。轟音。黒煙。
「ぐっ……」
 煙が晴れた時、メイジの身体はすでにボロボロになっていた。

       

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