Neetel Inside 文芸新都
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 ダール。凄まじい邪気だ。どれほどの力を持っているのか。アレンは剣を構えたまま、ジッとダールを睨みつけていた。
「やれやれ、いきなり戦闘の構えですか。しかし、気負いもしていなければ、怯えてもいない。さっき相手にしたクズとは大違いですね」
 ダールもローブを開いた。さっき相手にしたクズ。無論、セシルの事だ。
「何故、この場所が分かった?」
 アレンが言った。アレンが今居るこの場所には、神器が封印されているのだ。白いほこら。選ばれし者以外の者は入る事はおろか、見る事すら出来ないはずだった。
「ディスカル様のお力です」
 ダールが答える。
 ディスカルは魔界で二つの聖なる力がぶつかり合うのを感じ取っていた。アレンとヒウロ。二人の勇者アレクの子孫が一つの場所に集う。その結果、多大な聖なる力を生み出していたのだ。ディスカルはすぐにその力を感知し、透視を試みた。だが、見えなかった。神器が封印されている場所が、それを防いでいたのだ。そして、ディスカルはそれを不審に思った。
「そこで、私が出向く事になったのですよ。まぁ、正確な場所までは分かりませんでしたがね。ですが、こうして見つける事が出来たので、良しと致しましょう」
「……どうやら、魔族の王は相当な力の持ち主らしい」
 ディスカルは魔界から聖なる力を感知した。それだけでも信じ難い事なのに、その大凡(おおよそ)の場所まで当ててみせたのだ。
「さぁ、もう良いでしょう。私はあなたを手に入れなければならない」
 ダールが構えた。徒手空拳の構えだ。
「手に入れる? 何を訳の分からない事をッ」
 アレンが剣を構え、駆ける。刹那、両者が交わった。
「くッ!?」
「ちッ」
 両者が共に態勢を崩す。アレン。持ち直して剣を振る。ダールが右手で防ぐ。
「やりますねッ」
 ダールの回し蹴り。アレンが身を屈めてかわした。すかさず、剣を横に薙ぐ。ダールがそれを拳で弾き返す。アレンが距離を取った。
「ベギラゴンッ」
 火炎系上等級呪文。ダールがローブで身を包んだ。火炎が弾き飛ばされる。
「このローブは特殊な糸で編まれていましてね。魔人レオンの魔力でもない限り、ビクともしませんよ」
「ちぃッ」
 剣。ダールが弾く。拳。アレンがかわす。どちらも引かない。
「人間の分際でここまでやるとは! 正直、私は驚いていますよ!」
「お前たち魔族は、人間をみくびりすぎだ!」
「寝言をッ!」
 瞬間、ダールが拳を突き出した。超高速。四連撃。
「爆裂拳ッ」
 アレンが剣を構える。一、二、三、四。全て捌き切った。
「隼斬りッ」
 反撃。ダールが両手で弾き飛ばす。
「そのローブ、魔人レオンの魔力でもない限り、ビクともしない、と言ったな!」
 アレン。距離を取った。
「ほう?」
「この呪文でも、同じ事が言えるかッ」
 剣を天に突き上げる。雷雲。稲光。聖なる力が集約されていく。稲妻が咆哮をあげている。
「ギガデインッ」
 瞬間、雷神が轟いた。幾多の稲妻が叫びを上げつつ、ダールへと降り注ぐ。

       

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