Neetel Inside 文芸新都
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 炎が渦巻くルミナスの城下町を、メイジとエミリアが疾走していた。セシルを救うためである。メイジがエミリアの手を引き、道を先導する形で走っている。
 メイジはエミリアの説得に成功していた。メイジは正直に全てを話したのだ。今の状況、エミリアの力の事、そしてそれが今必要である事。簡潔ではあったが、メイジは理路整然と説明した。エミリアは少しの沈黙の後、頷いた。そして、王宮を飛びだした。王の許しも乞わず、兵たちの制止も聞かずにだ。
「本当に、私の力で、セシルさんを救う事が、出来るのですね」
 エミリアが息を切らしながら言う。
「はい。神器の言っている事と俺の予測が正しければ、救えるはずです」
 無論、保証は無い。だが、メイジは確信に近いものを持っていた。神器が自分に教えた事。自分が感じた親近感。そして、エミリアの正の力。納得できるだけの材料はある。
 金属音が聞こえてきた。ヒウロ達とセシルが交戦している音だ。
「ヒウロ、オリアー!」
 メイジが叫んだ。セシルの魔法剣と、オリアーの剣がぶつかり合っている。ヒウロは片膝を付き、剣を杖に踏ん張っていた。
「メ、メイジさん……!」
 ヒウロが辛そうに言った。脚を震わせながら立ち上がる。
「状況は芳しくないな」
「はい。セシルは俺達を殺そうと剣を振っています。でも、俺達は……!」
 殺意の有無。これは時に絶大な実力差となり得る。
「本当にセシルさんなのですね……」
 エミリアが呟いた。声色が哀しい。
「あ、エ、エミリア姫? メイジさん、これは」
 ヒウロが少し困惑したように言った。
「エミリア姫が鍵だ」
 メイジが言う。だが、どうすれば良い。
「……確かにセシルさんの心から邪悪なる力を感じます。それはとてつもなく深く、強い闇の力です」
 セシルを見ながら、エミリアが言った。
「どうすれば助ける事が出来ますか?」
「私の聖なる呪文で、闇の力を退けます。そのために、セシルさんの動きを止めてください」
 セシルの動きを止める。それは生半可な事ではない。
「ヒウロ、セシルの動きが鈍くなったり、魔法剣の輝きが色あせるといった事はなかったか?」
「……ありません」
 ヒウロが答える。セシルの魔力切れは期待できない。メイジはそう思った。魔法剣士は戦闘時間が短いという欠点を持っていた。魔力がある時しか、その力が発揮できないのである。魔力が無くなれば、魔法剣も消えるのだ。だが、セシルはその欠点を克服している。それは闇の力の影響なのか。
「力ずくで行くしかない。ヒウロ、まだやれるか?」
 メイジの問いに、ヒウロが頷いた。目に闘志が宿っている。まだ戦える。
「エミリア姫、俺達が何とかしてセシルの動きを止めます。その後、エミリア姫の力でセシルを」
「……はい」
「行くぞ、ヒウロ」
 メイジとヒウロが駆ける。

       

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