Neetel Inside 文芸新都
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 オリアーのエクスカリバーとセシルの魔法剣が馳せる。
「セシルさん、正気に戻ってください!」
「私に話しかけるなッ」
 セシルが頭痛に顔を歪めつつ、魔法剣を振り下ろした。オリアーがそれを受け流す。しかし、このままでは。オリアーはそう思った。防戦一方なのだ。いずれ限界が来る。そして、それは近い。
「オリアー!」
 メイジの声。オリアーが振り返る。
「セシルを助けるぞ。まずは動きを止める」
 やっと進展が見えた。オリアーはそう思った。そして頷いた。セシルを助ける。オリアーはこの言葉を待っていた。方法などは二の次だ。とにかく自分は動きを止めれば良い。オリアーは単純にそう考えた。
 オリアーの目に闘志が宿る。セシルの魔法剣。振り下ろしを避ける。その隙を付いて、エクスカリバーで魔法剣を跳ね上げた。
「イオッ」
 追撃。メイジの爆発系下等級呪文。セシルが態勢を崩す。
「セシルさんッ」
 瞬間、オリアーのエクスカリバーに闘気が宿った。神器入手の試練で会得した剣技。自らの闘気を相手に撃ち付け、身体の自由を奪う剣技。
「海破斬!」
 オリアーの剣が横に流れた。闘気が津波の如く、セシルを撃ち付ける。セシルが顔を歪めた。海破斬のダメージだ。だが、威力は加減している。
「このっ。!?」
 セシルが魔法剣を振ろうとする。しかし、腕が上がらない。オリアーの闘気がセシルの身体を縛りつけているのだ。そして。
「隼斬りッ」
 ヒウロの稲妻の剣。みね打ちで放つ。電撃がセシルの身体を貫く。瞬間、セシルは気を失った。
「セシルさん……!」
 崩れ落ちるセシルを、オリアーが慌てて抱きとめた。セシルの顔は苦痛で歪んでいる。
 オリアーは心が締め付けられるような思いだった。セシルの剣は泣いていた。そして、心の奥底で助けを求めていた。それなのに、自分の力ではどうする事も出来なかったのだ。オリアーは唇を噛みしめながら、そっとセシルの身体を地面に下した。
「エミリア姫、頼みます」
 メイジが言った。それを聞いたエミリアが静かに頷く。表情は真剣だ。ゆっくりとセシルに歩み寄り、しゃがみ込んだ。そして、強く目を瞑る。
「……セシルさん」
 エミリアが両手を突き出す。その両手が白い光で包まれた。淡く、優しい光だ。そして、どこか温かい。その光がセシルの身体を包み込んでいく。
「闇の力を除去します」
 エミリアがさらに強く目を瞑った。
「シャナク!」
 解呪呪文。聖なる力により、呪いや闇の力を浄化する呪文だ。セシルの胸の辺りに、白い光が集中していく。光が熱い。
「うぅ……」
 セシルがうめいた。眉間にシワを寄せ、歯を食い縛っている。だが、目はつむったままだ。白い光が少しずつ、上へと持ち上がって行く。それに引っ張られるかのように、ドス黒い何かの塊がセシルの胸からにじみ出てきた。
「……これが、闇の力」
 メイジが呟いた。ドス黒い塊は蜃気楼のように揺らめいており、凄まじい禍々しさを漂わせていた。そして、その塊を白い光が覆い尽くしていく。
「……!」
 エミリアが強く念じた。その瞬間、白い光がドス黒い塊を押し潰した。光の粒子のようなものが、空中へ舞い上がって行く。
「……大丈夫です。これで、セシルさんは助かるはずです」
 エミリアが大きく息を吐いた。額には大粒の汗が浮かんでいる。
「セシルさんっ」
 オリアーがセシルに呼び掛けた。

       

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