Neetel Inside 文芸新都
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 強烈な闇の闘気が、陽炎のように揺らめいている。それを見ているヒウロ達が思わず息を呑んだ。次の瞬間、アレンが駆けた。標的。ヒウロだ。
「お前から何か違和感を感じる。不快な違和感だ……!」
 アレンが言いつつ、剣を振り上げる。
 ヒウロが声をあげた。自身に喝を入れたのだ。アレンと交わる。だが。
「ぬるいわっ」
 アレンが剣をねじ込んだ。ヒウロの身体がよろける。そこを一閃。袈裟斬り。鮮血が宙を舞った。さらに蹴りをヒウロの腹に叩きこむ。ヒウロの身体が吹き飛んだ。その吹き飛ぶ身体にメラゾーマの追撃を放つ。強い。次元が違う。メイジ達に戦慄が走った。
「他の奴もすぐに終わらせてやる」
 アレンが剣を構えた。次の矛先はセシルだ。セシルが距離を取る。だが、アレンの突進。一瞬にして距離を詰められた。速い。セシルはそう思った。いや、速いだけではない。力強さ、瞬発力を同時に兼ね備えている速さだ。
 次の瞬間、闘気の旋風がアレンの眼前を掠めた。アレンが、その出所をキッと睨みつける。オリアーの空裂斬だった。
「僕が相手だっ」
 言って、オリアーが神器を構える。すると、アレンの目が急に血走った。
「その剣、貴様、シリウスの!」
 アレンに頭痛が走る。
「ぐ、ぐおっ」
 アレンが片手で頭を押さえた。自身の身体が熱い。あの剣に共鳴しているのか。アレンが叫び声をあげた。
「その剣、邪魔だ……!」
 アレンが駆ける。オリアーと交わった。二度、三度と剣がぶつかり合う。しかし、アレンの剣が速い。攻防の均衡がどんどん崩れていく。オリアーの顔が歪む。
「真空斬りッ」
 瞬間、闘気の風がアレンの剣を弾き返した。セシルだ。
「オリアー、挟み撃ちよ!」
「……はい!」
 オリアーとセシルの正中線上にアレンが居る。だが、アレンは慌てていない。それ所か、全身に闘気を溜めている。それに気付いたオリアーが攻撃を仕掛けた。攻防に持ち込めば、闘気を溜める余裕はなくなるはず。オリアーはそう考えたのだ。しかし、アレンはオリアーの攻撃を受けながら、いや、オリアーを押しつつ闘気を溜めこんでいく。さらにセシルが加わるも、状況は好転しない。
 その間、メイジはアレンの様子を窺っていた。何かおかしい。メイジはそう思った。セシルの時と違う点が一つあるのだ。それは、頭痛の頻度が圧倒的に少ない事だった。アレンはオリアーの神器に僅かな反応を示しただけなのだ。肉親であるヒウロに対しては、何も感じていない様子だった。セシルの時よりも、強力な闇の力を植え付けられているのかもしれない。メイジはそう思った。
「かぁッ」
 アレンが闇の闘気を放出させる。オリアーとセシルが思わず怯んだ。
「吹き飛べ……!」
 アレンが剣を天に突き上げる。剣が闇色に輝き出した。地獄の雷。
「オリアー、エクスカリバーに持ち替えろッ」
 メイジが叫んだ、次の瞬間。
「ジゴスパークッ」
 烈風が吹き荒れた。闇の稲妻が全てを破壊し尽くしていく。セシルの身体を貫き、オリアーの身体を棒切れの如く吹き飛ばす。二人はこの一撃で気を失ってしまった。
「……化け物め」
 メイジの頬を汗が伝った。神器が光り輝いている。対抗しろ。神器がそう言っている。しかし、メイジの頭には全滅の二文字が浮かんでいた。

       

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