Neetel Inside 文芸新都
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 ヒウロ達の目は上空に釘付けとなっていた。空に映像が映し出されているのである。そして、その映像には一人の魔族が映っていた。魔王ディスカルの側近、ビエルと名乗る魔族だ。そのビエルが国を一つ滅ぼす、と宣言したのである。
「どの国を滅ぼすのか? それはお前達、クズが一番気になる所だろう? そこで俺様は選んだ。この俺様に選ばれた、幸せい~っぱいの国とは」
 映像がビエルから城下町に切り替わった。上空からの映像である。だんだんと視点が引いていき、城と城下町が同時に映し出された。自然溢れる街並み。大きな魔方陣が描かれた特徴ある城門。そして、神秘的な雰囲気を漂わせる城。
「ファルス……王国」
 エミリアが小さく呟いた。声が震えている。
「もう分かっただろう? 正解はロス大陸のファルス王国でしたぁ。ヒャハ」
 ビエルの目は殺意で満ち溢れていた。その殺意は、どこか無邪気さを感じさせている。
 ロス大陸のファルス王国。全世界の首都の中でも、ファルス王国は一番の歴史の古さを持つ国だ。かつての魔人レオンの故郷とも言われており、ファルスは魔法と英知の国として名を馳せていた。そして、そういった経緯からか、ファルス王国は特殊な魔法防壁で守られていた。この魔法防壁は強力で、魔物の侵入はもちろん、外部からの力も弾き返す事で有名だった。
「おぉっと? この俺様の気に何かを感じ取ったのか、ファルス王国に何か膜が張られたぞぉ?」
 ビエルが口元を緩める。その言葉通り、ファルス王国は魔法防壁を展開させていた。薄黄緑に輝くシェルターだ。王国全体をくまなく覆っている。この魔法防壁で、ファルスは幾度となく危機を脱してきていた。
「だが、そんなチンケなモンで良いのかぁ? どれ、まずは小手調べ」
 ビエルが右手を突き出す。
「イオナズン」
 眼下のファルス王国へ向かって放つ。瞬間、大爆発が巻き起こった。ビエルの周囲が陽炎で揺らめく。
「ほほぉ。コイツはすげぇ」
 ファルス王国は無事だった。だが、無傷ではない。魔法防壁にヒビが入っているのだ。
「それ、もう一発」
 さらにイオナズンを放つ。大爆発。防壁のカケラなのか、薄黄緑に輝く魔力が四散していた。さらにひび割れがひどくなる。もう何発も耐えられない。それは誰の目から見ても明らかだった。
「ファルス王国のクズども、しっかりと見てるかぁ? この俺様のイオナズンをよ。ヒャハハハ」
 ビエルが顔をあげて笑う。
「とんでもないゲス野郎だ……!」
 それを見ていたメイジが口をついた。怒りで拳は固く握り締められている。
「さて、次の一撃で決めるとするか。おっと、その前に時間をやろう。逃げたければ逃げるが良いぞ。俺様は寛大なんだ。命を簡単に奪うのは好きじゃない」
 ビエルが言った。そして、ファルス王国から次々と人が出てきた。逃げだしているのだ。
「ってのは、うっそぴょーん」
 瞬間、大爆発。ビエルのイオナズンだった。ファルス王国から出てきた人々は、一瞬で消し炭とされた。
「あいつッ!」
 メイジが叫んだ。オリアーが歯を食い縛る。
「俺様は命を奪う事が大好きなんだ。破壊・殺戮。この二つが俺様の趣味なんだよぉ。ごめんな、嘘を言っちゃって。ヒャハハハ」
 そして、ビエルが両手を突き出した。
「でも、もう飽きたよ。てんで、手応えがねぇんだもん。飽きた玩具は壊さないとなぁ」
 ビエルの全身が揺らめく。闘気だ。映像越しからでも、ヒウロ達にその凄まじさを感じさせた。
「ビッグバン」
 瞬間、ファルス王国は消し飛んだ。

       

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